映画レビュー 超人的なパワーがあるわけでもない。金もない。何もないスーパーヒーロー!!映画『キック・アス』レビュー




コミック好きのさえない高校生デイブは、ある日、スーパーヒーローになることを思いつく。早速、ネットでコスチュームを買い、鏡の前でかっこいいポーズの研究だ。俺ってイケてるぜ!っと、街でヒーロー活動を始めるのだが、当然うまくいくはずもなく、散々な目に合ってしまう。だが、それでも懲りずに活動し続けるデイブ。すると、チンピラと闘っている動画がYouTubeに投稿され、ついにデイブはスーパーヒーロー”キック・アス”として一躍人気者になる。しかし、そこへヒット・ガールとビッグ・ダディという明らかにプロのスーパーヒーロー、そして謎の宿敵レッド・ミストも現れて、キック・アスは地元マフィアとの血まみれの抗争に巻き込まれて行くのであった・・・・
アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化された『ウォンテッド』(2008)の原作者マーク・ミラーの同名コミックを映画化。監督はガイ・リッチー監督作品のプロデューサーとして活躍し、『レイヤーケーキ』(2004)で監督デビューしたマシュー・ヴォーン。
コミック原作の映画と言いつつも、コミックと映画の制作はほぼ同時に進行していたので、キャラ設定やラストなど大きく異なっています。ダークで血まみれの童貞&オタク残酷物語になっているコミックに比べると映画版はポジティブでコメディー色が強くなっています。エグくなりがちなオナニーシーンも男女問わず笑えるようになっていて実に上手いなぁと思いました。これは『スターダスト』(2007)に続きコンビを組んだジェーン・ゴールドマン女史(赤髪で爆乳の姐ちゃんだ!)の存在が大きいのかなと思います。
もう一人の主人公、ヒット・ガールを演じたのはクロエ・モレッツ。撮影前、数ヶ月に及ぶトレーニングをし、キレのあるアクションを魅せてくれます。刀をブン回し、2丁拳銃をプッ放す!当然、手足バラバラ、血がピューピューの大スプラッターになるわけですが、ゴキゲンな音楽をバックに繰り広げられるので、グロいというよりはクール!!血と臓物が苦手な人でも大丈夫です。
そんなヒット・ガールに殺人スキルを叩き込んだ親父、ビッグ・ダディをノリノリで演じているのはニコラス・ケイジ。画面に出てきた瞬間からいい顔してます。あの顔はズルい!!「ビッグ・ダディは60 年代のTVシリーズのバットマンを見て育ったに違いない」というコミックマニアのニコラス・ケイジらしい役作りで、喋り方は60年代のバットマンを演じたアダム・ウェストのマネで、衣装もまんまバットマンなのです。他にも多くのアメコミにオマージュを捧げたシーンや台詞に思わずにんまりです。
放射能グモに噛まれたわけでもなく、超人的なパワーがあるわけでもない。金もない。何もない….この映画は何も持っていなくて、何も背負ってなかった青年デイブの成長物語でもあるのです。ビルの隙間さえ、飛び越えられなかったダメダメのデイブ=キック・アスが最後に魅せる大きな飛躍とは。
一部ではバカ映画と呼ばれていますが、「スーパーヒーローとは何か?」ということを真面目に、本気で考えているスーパーヒーロー映画であり、また青春映画の傑作でもあります。
レビュアー:ミヤヂ





『キック・アス』
12月18日(土)より、シネセゾン渋谷他全国順次公開
スタッフ
製作:マシュー・ヴォーン、ブラッド・ピット、クリス・サイキエル
監督:マシュー・ヴォーン
原作:マーク・ミラー、ジョン・S・ロミータ・Jr
キャスト
出演:アーロン・ジョンソン(『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』)、
クロエ・グレース・モレッツ(『(500)日のサマー』)、
クリストファー・ミンツ=プラッセ(『ヒックとドラゴン』)、
ニコラス・ケイジ(『魔法使いの弟子』) 
原題:KICK-ASS/字幕監修:町山智浩/字幕翻訳:松崎広幸
2010年/アメリカ・イギリス/117分/シネマスコープ/カラー
ドルビーSR・SRD/35mm/R-15+
(C) 2009 KA FILMS LP. ALL RIGHTS RESERVED.
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト http://www.kick-ass.jp/
オフィシャルTwitter http://twitter.com/kickassjp
感想まとめURL http://togetter.com/li/61193

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