【ネタバレあり】町山智浩が独自の目線で語る!人気海外ドラマ『THIS IS US 36歳、これから』オフィシャルインタビュー


全米放送たった11日でfacebookの予告映像が、TVシリーズ史上最高5,000万回という驚異的新記録を樹立し、平均視聴者数1,530万人を超えるお化け海外ドラマ『THIS IS US 36歳、これから』。ファン待望のDVDがリリース中。

今回、話題の海外ドラマ「THIS IS US 36歳、これから」を映画評論家・町山智浩氏がアメリカ社会の現実と交えて本作の魅力を語ったINTVが届いた。

■「24-TWENTY FOUR-」「プリズン・ブレイク」を超えた驚異の海外ドラマ!

―本作は全米で平均視聴率1,530万人を記録するほどの社会現象になりましたが、大ヒットの要因はなんだったのでしょうか。

ターゲットを広く取ったことだと思います。アメリカのドラマは最近、ターゲットを絞り込む傾向にあるんです。現在、ネット配信まで含めると年間500シリーズものドラマがありますから、内容も細分化されて先鋭化してます。それに一家でそろって一つのテレビを観るライフスタイルから、各自が各自の部屋でパソコンやスマホでドラマを観るようになったことも大きいです。そんな中、『THIS IS US』は。36歳と言う、人生のちょうど中間を中心にして、10代から60代まで楽しめるドラマにしました。また、登場人物も、イケメンのTVスター、投資コンサルタントのエリート、貧しい黒人の老人、過食症で肥満に苦しむ女性など、あらゆる種類のアメリカ人を取り入れています。また、次観たいという気持ちを起こさせるのがヒットへの道。本作は現在36歳の3人きょうだいと、36年前に彼らを産んだ両親のドラマが並行して進みますが、その36年間に父親ジャックがなくなっている。その「お父さんに何があったんだ?」というミステリーで視聴者を引っ張ってきました。アメリカではさまざまな推理が飛び交って、大変な話題になりました。

―タイトルにもあるように人生の岐路に立つ「36歳」のアラフォー男女を中心とした物語ですが、「36歳」の時の自分に掛けたい言葉はありますか?

僕もジャックと同じ36歳で子供を作って、家も無理して買いました。ジャックと同じく、ローンが払えるかどうか分からない不安、子育て出来るかどうかの不安がありましたけど、子育てはあっという間に終わっちゃいましたね。だからジャックに言ってやりたい。「何も心配しなくていいよ」と。ジャックは始め育児に慣れなくて、わざと遅く家に帰ってきたりしますが「もったいない! 子供とは少しでも長くいた方がいいよ!」と思いますね。ジャックが父親になりきれなくてアルコール依存症になるのはショックでした。この作品には一人も完璧な人はいないんです。ランダルは逆に完璧になろうとして、精神が張り詰めてパニックアタックになってしまいます。アメリカのドラマだと、弁護士、刑事、医者が多い中で等身大の人たちを描いた作品だと思います。

―アメリカ在住の町山さんからご覧になって、ここはリアルだなと思うシーンはどこでしたか。

第3話の家族で市民プールに行くシーンですね。うちも良く行ったのですが、一箇所にあらゆる人が集まるのでヒエラルキーが如実に見えてくるんですよね。日本にはあまりない現象だと思います。黒人の子たちが固まっているとか、太ってるケイトがイジメられたり、凄くリアルでしたね。

―本作は、アメリカでのトランプ大統領就任の影響を受けて失望した国民の希望の砦と言われていますが・・・

本来だったら、こういった家族の話ってキリスト教保守的な話に成りかねないんです、アメリカには“ファミリーバリュー(家族の価値)”という言葉があるんです。1980年に大統領に立候補したレーガン大統領が掲げた言葉で、60~70年代のヒッピー・ムーブメントで家族が解体されてしまったアメリカに、家族の価値を取り戻そうとお題目に上げて、キリスト教保守の人たちの指示を得て、レーガンは大統領になりました。だから、家族を押し出すと保守的な価値観にどうしても、流れてしまう。『THIS IS US』は、ギリギリのところでそうならない。神やキリスト教が出てこない。それをやると視聴者を分断してしまうから。物語の舞台のピッツバーグはロシア正教が多くて、実は凄く宗教的な土地なんですが、あえて触れてないですね。とにかく広く間口を取っている。『THIS IS US』はアフリカ系の間でも人気があります。黒人の養子ランダルと、36年ぶりに会った実の父親との物語はシーズン1で最高に泣かせるところでしたからね。子供からおじいちゃんおばあちゃんまで広く観られていますね。今だったら子供は子供、ティーンはティーンに分かれて皆バラバラでそれぞれのスマホで観ているけど、これは昔ながらの、家族皆で観られるドラマの再生です。

―なぜここまで日本とアメリカドラマのクオリティが違うのでしょう。

アメリカはまずパイロット(お試し版の第1話)を制作するので、それが上手くいかなければその後のエピソードは作らないんです。あと、デベロップメント(開発)の予算が日本には存在ない。日本は脚本書いても没になったら報酬ゼロ。アメリカの脚本家は没になっても、企画費としてお金が出る。そこが決定的に違うと思います。収益の規模が大きいから、余剰の部分があるんです。ハリウッドには脚本家が大勢いますが、デベロップメントの間、脚本家は、ちゃんと1年分の収入を支払われる。その脚本が没になっても、映画が完成しなくても、脚本家は生活できるんです。(アメリカと日本は)パイロットとデベロップメントの存在が決定的にちがいますよね。パイロットは普通の制作費がかかるもの、でも没になるものが山程ある。500本のシリーズがあるけど、その裏に没になった作品が何千本とあるから層が厚すぎるということです。

―最後に「THIS IS US」のお勧めポイントを教えてください。

誰でも自分が共感することを見つけることが出来る。僕はジャックだけじゃなくて、ランダルとも似てるんです。彼が36年ぶりに会った実の父親は末期ガンで数カ月の命でしたが、僕にもまったく同じようなことがあったんです。皆誰かしら、自分に近い人を見つけることが出来るところが素晴らしいと思います。

『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』
DVDリリース中&デジタル配信中
DVDコレクターズBOX(9枚組)希望小売価格 ¥14,400+税
(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
公式HP:http://video.foxjapan.com/tv/this-is-us/

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