『ダウンレンジ』公開前! 北村龍平監督インタビュー

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『VERSUS ヴァーサス』でその名を轟かせ、『あずみ』『ゴジラ FINAL WARS』『ミッドナイトミートトレイン』『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』等数々の作品で鬼才を発揮する北村龍平監督の最新作『ダウンレンジ』が9月15日から東京・新宿武蔵野館で2週間限定のレイトショー、そして大阪・第七藝術劇場で公開される。

本作はトロント国際映画祭においてミッドナイト部門に選出され、ワールドプレミア上映が行われ、世界中で高い評価を勝ち得た。

作品は6人の大学生が山道を車で移動している最中にパンクを起こし、タイヤの様子を見ると原因が銃撃されたものであることに気づくことから始まる。彼らは既に猟奇的なスナイパーの餌食となっており、次々とその凶弾に倒れていく中で如何にして銃弾の射程範囲内から脱出するのか大変見ごたえのあるスリラー作品として仕上がっている。

今回本作の制作に至った経緯と思い、映画に対する思いをたっぷりと伺った。

(取材:畑史進)











—本作の構想はいつ頃スタートしたんでしょうか?

北村監督:構想は6年前の2012年からですね。


—シチュエーションがかなり特殊な作品でしたが、その時は画とシチュエーションどちらが先行した感じですか?

北村監督:コンセプトが先に決まりました。ハリウッドを拠点に長年活動していると、企画を成立させるためのノウハウというのがなんとなく分かってくるんです。その時に必要なのがコンセプトで、それが一言で言えるのが望ましいです。例えば「見たら1週間後に死ぬビデオ」って聞いたら興味が湧くじゃないですか。脚本を渡したって中々読まれないし、読む前に「どんな話?」って来たら直ぐに一言で言えるコンセプトというのはドライなハリウッドではもっとも重要なんです。

2012年というのは色んなプロジェクトが進みそうで進まなかった苦しい時期で、予算が大きいほどなかなか思うように進まない。僕は映画を撮っているときが一番幸せでとにかく新作が撮りたい。そこで脚本家のジョーイ・オブライアンと飯を食いながら低予算でハイコンセプトな作品でなにか作れないかねと打ち合わせしてたんです。そこでアクションというのは何かとお金がかかるんで、どうしてもホラーやスリラー系になってくるわけで、これだけやり尽くされたジャンルでなにか新しいものはないかなと模索したんです。そこで名前が上がるのがジェームズ・ワンの屋敷ホラー系で、彼は僕も仲が良いんだけど非常に天才で、予告編で3カットぐらいは必ず、強烈なインパクトを与えるキラーカットを入れ込み、そこにお客さんが惹かれて絶対にヒットさせるという必勝の方程式で作っているわけです。

だから僕達が今更「引っ越してきた家に女もしくは子供の幽霊が居て~」、なんてやっても新しさが無いし、かと言ってスラッシャー系をやっても『13日の金曜日』『ハロウィン』の亜流にはしたくない。そこでジョーイが「スナイパーに狙われたら怖くね?」って話を出したんです。確かに見えないところから撃たれたら反撃のしようが無いし、喧嘩にならないから怖いなって思って、そこからジョーイと話を掘って行って2、3時間後には今の映画の骨格は出来上がったんです。


—確かに従来のクローズドな空間で展開されるスリラーがそのままオープンフィールドに舞台を移したようなシチューションだなと思えましたね。

北村監督:そこがテーマで『激突』『悪魔のいけにえ』『ヒッチャー』これらの作品は超えられないけど、志として徹底的にミニマムに落とし込んで、でもテンションはマキシマムみたいなことを心がけました。今の映画は何でも説明がちになってしまいますが、僕はそこをすべて排除することからミニマム化を進めていったんです。


—あのキャラクターたちの行動もジョーイの脚本で完成されていたのですか?

北村監督:そこは僕ともやり取りをして20ページ位のプロットに赤で修正を入れたりして、共同で脚本を完成させたんです。彼はありとあらゆる映画を見ている非常に才能の有るジョニー・トー一派の脚本家なので非常に面白い脚本を仕上げてくれたと思います。アクションが好きです、ホラーが好きですという人が脚本家や監督になると、自分の好きな要素だけが強く作品に出てきて他がおざなりになってしまっている作品も多いですが、僕は一般的には血みどろ系やアクション系のイメージで見られていると思いますが、好きな作品を上げると『ファンダンゴ』や『リトル・ロマンス』『炎のランナー』などアクション系では埋まらないんです。ジョーイも僕もただ映画が好きで別にアクションや血みどろショーだけを見せたいわけじゃない。後半になっていくにつれて明らかになるあの大学生たちのバックボーンはジョーイのアイディアで、アメリカの大学生の若者の感情や言葉のリアリティが出ていて大変助かりましたし、彼の才能に感服しました。





—アメリカで銃乱射事件が問題になっていますが、この作品がまた問題提起として成立しているようにも感じました。

北村監督:もちろんそう感じ取る人もいるだろうし、色んな世界中のインタビュワーから聞かれていますが、映画というのはエンターテインメントであって、もし本当にそういうことを全面に押し出すなら『ボウリング・フォー・コロンバイン』の様な映画を撮りますよ。映画というのはいろんな表現や伝え方がありますが、僕の中ではエンターテインメントだと思っています。だから自分から押し出したり表立ってそのことについて語りはしないですが、作り手としてそれはあります。僕の住んでいるところはアメリカでも5本指に入るほどの治安の良いところですが、毎週観に行っている映画館のあるモールでも最近銃撃事件があったんです。そりゃもちろん銃の所持に関して賛成か反対かって言われたら当然反対ですけど、もうここまで多くの人に行き渡ってかつ、長いことそういう歴史を送ってきた国でそれを言ったっても、果たして解決する方法があるのだろうか?とさえ思いますが、理不尽な銃の暴力には憤りを感じますし、作品の根底にはそういったメッセージも含んでいます。


—今作を観終わった後『ミッドナイトミートトレイン』に近いテイストがありましたが、監督が映画を撮るときエンディングで心がけていることって何でしょうか?

北村監督:僕はなんとなく予定調和で終わるのが嫌で、デビュー作から一貫して「終わりよければ全て良し」を実践しているつもりで、エンディングのラストカットで最高に盛り上がらなくてはいけないと思っているんです。『ルパン三世』でもあのルパンがニカーって笑ったところでスパッと切って布袋さんの曲を流して、劇場から出ていく時にお客さんの気持ちを高めたいというのがあるんです。その辺今作のテイストは『NO ONE LIVES ノー・ワン・リヴズ』『ミッドナイトミートトレイン』に近いものがこの『ダウンレンジ』にはあるかもしれませんね。

僕は人間の善悪というのは結構曖昧なものだと思っていて、みんなそれぞれの正義があって、時には神の名を掲げて戦争をすることだってあるわけじゃないですか。絶対悪を覗いてこの境界線は非常に難しいと思うんです。『ミッドナイトミートトレイン』という作品では連続殺人鬼が電車に乗っていて、彼が人を殺さないと都合の悪いことが社会に起こるので仕方なく、誰かがやらねばならないことをやっている。言うなれば彼なりの正義を執行しているんです。

あの後に『ザ・コーヴ』という映画が公開されましたが、あれはエンターテインメントとしてよく出来ているなと思ったんです。ものすごく一方的に環境テロ攻撃を仕掛けている映画で、あまりに腹立つから、カウンターでヤツらの横暴さを暴く映画でも撮ってやろうかって思ったんですが、映画作りのテクニックとしてはすごい技術で実に完成度の高いエンターテインメント映画なんですよ。最後は海に血が広がってイルカの鳴き声が聞こえるエンディングなんてやって、漁師さんたちを映画の中でとんでもない悪党に仕立てているんですよね。

『ミッドナイトミートトレイン』では実際に食肉工場を使ったんですが、ロケハンした時に衝撃だったのが、牛さんたちが近いうちに殺されるのが分かっていて、その鳴き声が聞こえるわけです。あんな物悲しい声は聞いたことがない。そこには屠殺をする地下室まであって、凄まじい匂いとなんともいえない雰囲気で。そこをワンカット撮ったんたけど、結局使わなかった。それから肉が食えなくなるんじゃないかと思ったけど、そうはならずに命を頂いているんだ、そういうことをしてくれる人たちが居るからステーキやハンバーグが食べられるんだ思って、逆に残さなくなりましたね。『ミッドナイトミートトレイン』の物語というのは、食物連鎖の上に人間が立っていると思っているけど、その更に上が居たらどうするんだよという投げかけで、エンディングもそれに沿った形にしました。

『ダウンレンジ』も「猟奇的なスナイパーがいました、人がバンバン死にました」だけでは無くて「そういう状況に追い込まれたらどういうサバイブをするのか」というものを見せかったんです。他のこういったパニック物になるとギャーギャー人が騒いで頭が悪いまま殺されるじゃないですか。それが嫌でどうやって頭を使って生き延びるのか考えようよ、簡単にギブアップしない物語にしようよという話にしてどの様に落とそうかなと考えていたら天才脚本家ジョーイが、ショッキングでありながら考えさせられる素晴らしいエンディングを思いついてきて、その時点で僕には物語が全て見えて、これは映画になると確信が持てました。





—5月頃にステファニーさんにインタビューしたんですが、彼女を起用した経緯・理由を教えていただけますか?

北村監督:彼女は1万人くらいオーディションした中から選んだんだけど、あの役は全然ハマる子が居なかったんですよ。そこでもう一度資料を見返しているうちに彼女が出てきて、あれ?この子イメージピッタリなのにと思ったら、選考時のビデオがスタッフの手違いで僕に届いていなかったんです。そこで彼女を呼んで実際に会ってみたら役としてピッタリだったので即決で決まりましたね。十年もハリウッドにいればある程度コネクションも有るんで、ゲストやカメオでちょっと売れている役者を引っ張ってくる事も出来ますが、そうするとなんとなく展開がお客さんに読まれる恐れがあるじゃないですか。ほとんど無名の役者さんを使っても展開の予想はされちゃいますが、そこでお客さんを裏切るような展開にも持っていくように心がけました。ここでこの人が死んだらこれからの展開はどうなるの?っていう予測不可能な展開にしたかったんです。

彼女だけに限らず無名でハングリーな役者達のモチベーションは物凄く高かったので、そのエネルギーが映画に反映されたと思います。彼女は過去にジェームズ・ワンの映画でちっちゃな役で出ていますが、役者としてとてもプロフェッショナルでしんどい時があっても決してそれを表に出さないし、本当に映画の中で演じているケレンそのものでしたよ。僕は役者をキャスティングする時にその中のキャラクターと役者本人が同化しやすい方をキャスティングする傾向にあって、演出する時にもそういうふうに持っていきやすいんです。もちろん中には役柄と性格がまるで違うスキルで演じる人もいらっしゃいますが、この『ダウンレンジ』には荒削りなパションみたいな物が必要だなと思ってキャスティングしました。だから割と全員が全員そのまんまあの役になったかなと思います。





—スナイパー役の彼はどれくらい撮影に同行したんですか?

北村監督:彼は数日でしたね。そういえば彼最近行方不明で完成プレミアもトロントでもメールで連絡したんですが、一切連絡が無いんですよ。普通は嬉しいから来るじゃないですか。


—彼はどんな顔してるんですか?

北村監督:無茶苦茶かっこ良いですよ。マシュー・マコノヒーみたいな顔。スナイパーの顔はハッキリ見えないので、別に僕が銃を構えてもいいけど(笑)。そういう訳にはいかないから相当なオーディションをしたんですよ。どこ行っちゃったのかなあ。生きてるのかなあ。まぁ役柄と同じでミステリアスでいいんじゃないですかね。


—今回の撮影で苦労したことは?

北村監督:毎回撮影は大変だけど、今作はああいった場所を使っているんで、劇中の設定そのままに携帯も無線も繋がらない場所だったんです。ベースキャンプも結構車で上ったところにあるもんで、撮影の現場で物がないと分かったら一々車で取りに帰らないといけないし、僕は画角的にワイドショットが好きだから機材車もかなり遠くに止めないと写り込んじゃう。だからトイレも含めて全てが遠くにあるからそれが印象に残っていますね。役者にも「肉体的にも精神的にも追い込まないと説得力が生まれないよ」って言ったんですが、彼らも活きが良いから最後まで付いて来てくれるし、僕が無名の時に抜擢したブラッドリー・クーパーやルーク・エヴァンスが皆出世しているから更にモチベーションを上げて臨んでくれました。トッド役のロッド・ヘルナンデスは特にテンション高く皆を引っぱって行ってくれたし本当に助かりました。彼もオーディションのときから素晴らしい演技を魅せてくれたんで一発で決まりましたね。





—あの撮影場所を探すのは大変じゃなかったですか?

北村監督:カリフォルニアという土地は青空がきれいでピーカンなんですが、画的にはつまらないんですよ。僕はわざとらしいCGは使いたくなくて、特に今作は70年代80年代の様なアナログなテイストを目指して作っているんですが、わからないように雲を足したりしたんです。火達磨になるところも本当に火達磨にして撮りました。今はもうあまりそんな危ないことしないんですよね、CGの方が安全だし簡単なので。でもそんな安易はことはやりたくなかった。本当は火達磨選手権の世界最長を目指してワンカットで撮ろうかと考えたんですが、秒単位で保険金が上がっちゃうんで止めました(笑)。


—劇中で印象的なあの木もよく見つけたなと思いましたね。

北村監督:ロケハンもかなり苦労して、基本自主映画だから皆で探して確かあの木はジョーイが見つけたんだと思いますよ。イメージ通りの物があったんでよかったです。ただあそこは保護区になっていて、いいことだと思いますが、アメリカはそういったことに対して大変うるさくて、当然だけど木に傷をつけちゃいけないし、監視員もずっと現場に張り付いているんです。で、車で木にぶつかるシーンなんかは土のうを沢山置いてなんとかぶち当たっている様に見せているわけです。あとコンドルも保護動物になっていて、視界に入っている間は撮影しちゃいけないの。だからコンドル1羽のために「コンドルだー止めろー!」って撮影を中断しなくちゃいけないから大変だったね。


—最後にこの映画に興味を持っている方にメッセージをおねがいします!

北村監督:僕は『VERSUS ヴァーサス』という作品で世に出て、久しぶりに原点に立ち返った作品だと思いますし、海外では『VERSUS ヴァーサス』以来好きだという声も聞いており僕もその様に思っています。最近ここまで極限のテンションで押し切ってエッジを効かせた作品はないと思います。この極限の緊張感とラスト37秒の衝撃を是非劇場で楽しんでほしいと思います。




『ダウンレンジ』
9月15日(土) 新宿武蔵野館2週間限定レイトショー
配給:ジェンコ
©Genco. All Rights Reserved.
公式サイト:downrangethemovie.com



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