最凶コンビ再び！『ケインアンドリンチ2 ドッグ・デイズ』レビュー

「スクウェア・エニックス　エクストリームエッジ」から絶賛発売中の『ケインアンドリンチ2 ドッグ・デイズ』。人間のリアルを生々しく描き、圧倒的な暴力に彩られた二人の男の人間ドラマが鮮烈な映像で表現される。2007年に発売され、全世界出荷本数が170万本を超えるヒット作となった前作『ケインアンドリンチ: デッドメン』に続くシリーズ第2弾。物語の舞台を上海に移し、些細な事件をきっかけにリンチとケインの二人は再び暴力の渦に巻き込まれてゆく―。

『ケインアンドリンチ2 ドッグ・デイズ』レビュー　
text by 吉田味庵（元ジャンクハンター吉田）

まず舞台はいきなり上海から始まる。リンチが主役だけあり彼の中心目線で物語は展開するから前作でただの薬中毒のボンクラだった落武者ヘアーのオッサンだけではないことを証明してくれる。ここは補足しなくてはならない重要な部分なんだけど、前作『K&L』ではエンディングが２種類存在しており、ケインと娘の２人だけがヘリコプターでリンチ含めた仲間たちを置き去りにしてしまった結末から本作の続編への物語が導入されているんで、ケインの娘が死んでしまったバッドエンディング(!?)は採用されていない。ってか置いてけぼりにされたリンチがケインをすんなり許しているのもどうかと思うけど。

物語はケインとリンチが何者かに捕まっているシーンからスタート。２人は裸の状態で椅子に縛り付けられ、身動きの取れない彼らの肌をカッターナイフで切り裂くシーンが！……そこから時間軸は２日前に遡る映画的演出で言うところの帰納法が本ゲームでも採用されているところは作り手たちのニクイ演出。本作で主役の座についたリンチは恋人の中国人シウと共に暮らす一方、上海マフィアを率いるグレイザーの手下として働いていた。
グレイザーがアフリカでの武器取引をすることから、リンチは人手が欲しいとケインを上海へ呼び寄せる。上海に到着した直後からケインはリンチの仕事に巻き込まれ、早々にチンピラやマフィア、そして上海公安部隊たちとの銃撃戦を繰り広げることに……。

というのがオープニングアクト。決してカッコイイようなイケメンや美女が出てくるわけでもない、ユーザーに媚びることを全くしていないストロングスタイルな三人称視点のTPSなんだが、前作と変わったところはカバーアクションが盛り込まれたところ。これによって遮蔽物の陰から手だけ出して銃撃できたり、少々攻略がしやすくなっていたりと本シリーズが大好きな筆者的にはちょっとした改善箇所だけでも嬉しい限り。素人が現場でハンディカメラを用いたアマチュア撮影しているような絵作りは賛否分かれると思うが、走るとカメラも思いっきり揺れまくるので体内からゲロがリバースすること必死……という方はオプションで揺れのないカメラワークも選択できるので最初から試みるべき。このアマチュアリズムなカメラワークは臨場感があるものの、逆にゲームプレイに関しては若干マイナスにもなっている気がした。本作の物語設定的にアンダーグラウンドな内容であるため新しい試みなのは素晴らしくマッチングしているんだけど、筆者は本気でゲロがリバースしてしまった(苦笑)。

本作はオリジナルの英語音声の他、前作と同じ声優、内田直哉と麦人がケインとリンチを担当しているんで、善玉でも悪玉でもないケインとリンチの会話は英語版ではなく日本語吹替をオススメする。なぜかと説明すると字幕で追う文字量ではない濃厚な会話が多過ぎるからだ。海外版を先にプレイしてクリアしたのだが英語での会話量が当然多過ぎて追いつけない！これを字幕にして文字で追っていくだけでも戦闘への集中力ではなく、会話を追うための集中力で戦力ダウンは確実視！

前作でバカだった敵キャラクターは随分と成長しており、遮蔽物に隠れカバーして銃撃戦を繰り広げていると別の敵がサイドへ回りこんできてクロスファイアーをしてくるのだ。
バカなAIなんだろうと思っていたら近距離からショットガンをぶっ放されて一発死も度々遭遇したりする。前作ではデフォルトで手榴弾を所持していたが今回は踏襲されておらず、消火器等のマップに存在しているアイテムを使ってボムのように扱うリアリティーさへと変更。意外だったのがスナイパーライフルの登場。実際使わないでもシングルモードはクリアできたのだが、使いどころは……そのようなボムになりそうな爆破アイテムの狙撃に一番向いていた気がした。ぶっちゃけ本作はマシンガンのような突撃銃を用い、カバーアクションを使ってスニーキングしつつ近距離に接近し、照準を出さずに(この状態でトリガーを引けば画面のセンターへ銃弾が放たれることを利用)白兵戦の如く銃乱射で走りながら殺すのがクリアまでの最良の方法なのだ。前作のように接近戦でプッシュブレードが今回は使えないので(仕様として装備してない)以前のようなショートレンジでの戦闘は不可なもんで、ややミドルレンジからショートレンジになりそうな距離を保っての移動しながらの銃乱射がかなりベストである。逆にリンチと言えばショットガンなんだけど、マシンガンをメインにサブでショットガンを装備(１度に２つまでしか武器は所持できない)するやり方を推奨。

海外版と国内版の大きな違いはケインとリンチが拷問を受けた際に全裸だったところのチンポ箇所へモザイクが入っている＆ヘッドショットで頭や顔面から血を流しているところへのモザイク＆下着を身に着けていない女性へのモザイクなどモザイク表現はなくなり下着をつけたりしている……ありゃ？モザイクのネタばかりになったしまった。ちなみに、国内版では民間人を殺すことはできない。ってか罪もない民間人を殺すことが果たして楽しいのだろうか……人間として人格を疑ってしまうが好きな人は好きらしいけどそんな奴は海外版買って遊ぶべき。国内版で民間人が殺せないのは前作同様、そこはしっかり踏襲されている。

兎にも角にもハードコアなアンダーグラウンドな世界を描いたゲームをこよなく好むユーザーは能書き垂れずに買うべき。海外での評価が低いとかゴチャゴチャ言わんと世界観を楽しむゲームが『ケイン＆リンチ』シリーズなわけで、荒っぽい画像も狙ってやっていたり、素晴らしいCo-opモードやフラジールアライアンスなどのオンラインでのオリジナリティー溢れる対戦など盛り沢山なので、シングルモードは物語こそ短いけどもオンラインで長く遊べるゲームなのは保証する！　あ、クライマックスはマイケル・マン監督の『ヒート』へのオマージュが入っていたり、ケインをプレイすることになったりするので決して諦めないで最後まで遊んで欲しい。前作のダンプカーを倒すミッションでクリアできずに売り払ってしまった方々が多かったそうだけど、続編ではそのような激しく行き詰まりなミッションはないんでご安心あれ！

今回の続編はリンチが主役にシフトしているっつうことで『リンチ＆ケイン2』にして欲しかったと思うのは自分だけか？(苦笑)

K&L.jpg

『ケインアンドリンチ２ドッグ・デイズ』
対応ハード：プレイステーション3、Xbox 360
ジャンル：クライムTPS
プレイ人数：１～２人（オンライン対戦：4～12人）
発売日：2010年8月26日(発売中)
希望小売価格：7,980円(税込)
CERO年齢区分：D (17歳以上対象)

「SQUARE ENIX EXTREME EDGES」URL
http://www.sqex-ee.jp/

オフィシャルWEBサイトURL
http://www.square-enix.co.jp/kl2