ゲームソフトにおけるアーカイブの意義と日本型のeスポーツの未来を論じあった「あそぶ!ゲーム展シンポジウム」レポート

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【取材・文:畑史進】

埼玉県のSKIPシティ映像ミュージアムでは、4月7日までテレビゲームの歴史を振り返る「あそぶ!ゲーム展 ステージ3」が開催されている。このゲーム展は過去に発売されたゲームソフトから、設置されたアーケードゲームが幅広く展示され、試遊できるようになっており、今回の展示では3DOからPS1、セガサターンなどの近年発売されたゲームが紹介されている。

2月23日にはシンポジウムが開催され、批評家の中川大地氏、立命館大学映像学部教授の中村彰憲氏、バンダイナムコスタジオの兵藤岳史氏、ゲームデザイナーの三上真司氏、明治大学国際日本学部准教授の森川嘉一郎氏、司会に遠藤雅伸氏、馬場章氏が登壇し、ゲームアーカイブから日本型eスポーツの未来像、注目するべき最新技術などについて興味深いディスカッションが行われた。



■第1部:ゲームアーカイブ、いつやるの?今でしょ!

最初のテーマは、過去に発売されたゲームのアーカイブ化についてメーカーから大学がどの様に保管し、理想のアーカイブ化は何かをお互いにプレゼン発表をし、今後の適切なアーカイブ化と運営方法について話し合った。このディベートにおいて登壇者の誰もが、ゲームソフトのアーカイブは現状、ゲームメーカー、博物館等の施設や学術機関、愛好家が各々収集を進めており、今後コレクターの死去やコストカットによる資料損失が起こりうると提議した。これらの解決策として今後、国を巻き込んだ形での資料保管方法の模索や、資料のリストを共有するなどの連携を強めるべきであると共通の認識を持っていた。



最初にプレゼンテーションを行った立命館大学の中村氏は、日本製のゲームが世界にとって如何に重要な文化であり、これらの認識と認知の向上、そこから来る意義深いアーカイブ活用について切り出した。ここで言うアーカイブの対象は、ソフトはもちろんのこと、説明書やパッケージのデジタルスキャン、関連資料、果てはゲームのプレイデータまでアーカイブ化を行っていること実情を発表。また、かつては任天堂と協力して、エミュレーター機のアーカイブ化も2点ほどあったが、著作権の関係から中断したという意外なエピソードも明かした。続いてバンダイナムコの兵藤氏は、自社でゲームソフトから企画書、仕様書、ロケテストの資料、他社のゲームの評価書まで保管されていたが、近年廃棄の危機まであった事を明かした。こうした経緯から、これらの資料、一企業が行うのでは限界があるため、他企業との連携も必要であると提議した。

明治大学の森川氏は、アーカイブの維持費は永遠にかかり続けることが問題であり、クラウドファンディングや、資料館の運営では難しい部分があると自身の経験を話した。更にゲームアーカイブの問題点として、ゲームメーカーの企業努力も、物量的にその企業の範囲でしかできないこと。また、自治体にゲーム博物館のような物が建設された場合でも、暴力要素を踏まえたゲームや、エロゲーの保存に際して自治体の長の理解にあっても、税金が投入されていることから市民感情の問題が発生しやすいことや、次の政権に映ったときにたちまち撤収させられる恐れがあると予測を交えて論じた。そこで森川氏は、国立国会図書館で保存をするのが、これらの人為的な問題をクリアし、かつ保存のためのデジタルコピーも容認されやすいため、一番建設的であると主張した。
また、漫画は現状、書籍として保管されることの理解とアーカイブのノウハウが進んでいることから、これに関連して「アニメと一緒にゲームもついでに保管するという形」で解決の糸口が見えやすいと提議した。これの根拠として、『ゲームセンターあらし』のような漫画作品が、現在ではゲームとして見劣りするパックマンやインベーダーゲームを遊んでいる当時の光景を描写しているため、大きな手助けになると話した。

また、森川氏はアーカイブ理解の得られにくいエロゲーについて、エニックスの『ロリータシンドローム』を例に上げ、このゲームを起点したことで枝分かれした先に、『Fate/Stay Night』の誕生があり、そこから10数年が経って『Fate/Grand Order』の誕生が、ソニーの莫大な収益になっていることと紐づくと『ロリータシンドローム』の保存は価値が出ると、どんなゲームでもビハインドのある説明を付けると理解が得られると力説した。

馬場氏は最後に、ゲームアーカイブの目的は、現在を構築する過去と未来を繋ぐもので、ゲーム機やソフト、パッケージを始め、コピー版、海賊版含め、分類に拘る必要は無いと主張。ゲームソフトはデジタルデータでありつつも、説明書やパッケージはアナログのものであるから、デジタイズ化してアーカイブを海外の知見も合わせて進めていくべきだと意見した。また、ゲームメーカーが様々な問題や事情をはらんでいる現在、クリエイターの身の振り方一つで、アーカイブが翌日無くなりそうになる事案も過去にあったことも話した。こうした失われていく資料をなくさないためにも、企業同士の連携でアーカイブの所在をデータベース化することが大切だと話した。


■第2部:デジタルゲームの未来

「デジタルゲームの未来」というテーマでは、「日本型のeスポーツの未来像」「注目すべき最新技術」「日本ゲームのキーワード(Paidiaとナラティブ)」という3つの議題を上げて論議を行った。「日本型のeスポーツの未来像」というテーマで中川氏は、海外型のeスポーツが、なかなか日本で上手くいかない矢先に、明治大学で行ったゲーム大会で、複数のゲームをプレイして、その結果を総合した大会が盛り上がった経験から、「『東京フレンドパーク2』みたいにチーム戦でバラエティに富むと興味を持ってもらえる」と話した。三上氏はクリエイターの目線から、「壇上でプレイヤーがスキルを披露して、観衆が色々声を上げるという『劇場型のゲーム』が日本には当てはまりやすいかなと思って、これを念頭に入れて作ってはいます」とユーザーの動向を分析した。



ここから馬場氏は、日本のゲーム市場はゲーセンでプレイヤーコミュニティが発達する一方で、メーカー側は新作を作ってプロモーションをするだけというそれぞれ独自の道を歩んで来た歴史があり、これは欧米のゲーム文化の発展とは違う面白い点だと指摘。また、日本はゲームプレイヤーの生き様がゲーム内に反映される事が好まれ、それがある種の道であり、武道に通じるものがあるかもしれないと話した。

「注目すべき最新技術」というテーマでは、遠藤氏はVRの『サマーレッスン』を超えたVRの体験はまだ見ていないという感想から切り出し、ゲームでも採用されるハプティクス技術やAR技術、そしてAI技術が今後どの様にゲームに活かされるのかと提議した。ここから話題は人間の目線を追う「アイトラッカー」にまで渡り、三上氏からホラーゲームの制作で使ったことがあるというエピソードが明かされ、AI等の技術が上がってもホラーゲームは結局、「人間のやるお化け屋敷」の再現に行き着くのではないか。と話したのが非常に印象的だった。

「日本のゲームキーワード、Paidiaとナラティブ」というテーマでは、ゲームの楽しみ方、ユーザーの楽しませ方についての議論が深められた。ここで馬場氏は、日本はすでにナラティブなゲームに関しては『ドラゴンクエスト』の竜王の島に行くための過程が、断片的なストーリーをかき集め、そこからエンディングに至るまでのストーリーをユーザーの想像心を掻き立てており、この時点で既にナラティブなゲーム体験は作られていたと指摘した。ここで遠藤氏も同意するように、『ゼビウス』を受けてゲームクリエイターになった人たちから、敵の登場システムが、プレイヤーの行動から様々にストーリー分岐している様にみえたため、ナラティブ的な考え方だったと指摘された過去を交えて日本のゲームは現在の様に意識されるはるか前から、自然に先進的に取り組んでいたのではないかと話した。

ここで森川氏は、ゲーム以外のデジタルコンテンツの例として、「決して人になれない、人のように上手く歌える様になれない彼女をプレイヤーが一生懸命になって彼女に歌を教え、人に近く歌わせることから彼女に親しみを抱いて、彼女の歌を聞く人までそのストーリーを感じたことから世界中が熱狂したのではないか」と初音ミクのムーブメントを分析して会場を唸らせた。

最後に中川氏は、『ゼルダの伝説:ブレスオブザワイルド』が世界的に熱狂できた理由をゼルダという大型タイトルの所以では無いという部分から切り出し、「オープンワールドになったことで、『ゼルダ』というストーリーテリングが崩れる恐れがあったはずが、逆にプレイヤーは各々好きに動き回ってストーリーのかけらを集めていき、各個人でしか体験できないオリジナルのストーリーが構成されたことが素晴らしかった」と評した。今回のディベートの様子は後日、SKIPシティのYouTubeチャンネルでも公開されるので、興味のある方はそちらも併せてみていただきたい。


■あそぶ!ゲーム展シンポジウム
http://www.skipcity.jp/vm/game3/

■SKIPシティチャンネル
https://www.youtube.com/user/skipcitychannel/featured



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