映画レビュー リメイク版『ベスト・キッド』は北京観光気分に浸れること必至!



オリジナル版の思い出は『アウトサイダー』に出演していたラルフ・マッチオと劇中曲のスコアを担当していたビル・コンティとコブラ会のマーティン・コーヴと言った偏った好的三大要素だったんだけど(故ノリユキ・パット・モリタにはどーしても強さが感じられなかった)


今回のリメイク版では師匠役にジャッキー・チェンだったので観る前から異常に期待が高まった。


で、完成された作品は139分もあると伺い「ちょっと長過ぎるんぢゃね?」と、どーにも気乗りがしなくなった……んだが、実際に試写で観てビックリ! 演出力には少々欠けるものの年老いたジャッキー(実際に年食っちゃったけどね)がスクリーンに登場するだけで長尺を感じさせない”何か”があった。


その”何か”とは、恐らく古くから数多くのジャッキー映画を観てきたおかげで、今までは教えられる側だったジャッキーが遂に教える師匠なポジションになってしまったかとの感慨深いものだったんだろう。オリジナル版は高校生活を
フィーチャーしていたけど、リメイク版では下層階級出身の中学生ジェイデン・スミスが中国人からのイジメ(人種差別はデリケートに扱わねばならないんで黒人だからというイジメではない)、上流階級層の同級生との恋、父親が亡くなって母親と2人暮らしの孤独さ(でも健気に陽気に頑張っている)など、オリジナル版とリメイク版を比較するようなエッセンスが見当たらない物語になっていることがポイント。



そんなカンフーを教えてくれる師匠ジャッキーにも孤独な悩みが心のトラウマとして残っており、ジェイデンと次第に心を開きつつ、最終的にはコブラ会に匹敵する敵に対して2人のクロスマインドな確固たる意思がクライマックスのカンフー大会で炸裂する。


リメイクなので結末がわかっているスタンスで作品を観たものの、最大の見せ場はジェームズ・ホーナーの奏でる壮大なスコアの中、ジャッキーとジェイデンのトレーニングモンタージュ(万里の長城など世界遺産を背景にしているので必見!)シーンがあまりにも素晴らし過ぎるのでオリジナル版とジャッキー・チェンファンであれば確実に胸に染みるはず。


ジェイデンの生意気さはナチュラルな感じもするけど、それが又良い味を出してて、オリジナル版の泣き顔っぽいラルフ・マッオとは好対照。そのおかげか劇中中盤を過ぎるとリメイク版な匂いは感じられなくなった。


雑誌等様々なところで本作の作品評を目にすると「新しい演技でジャッキー・チェンの新境地!」みたいなことが書かれているんだけども……いつものジャッキーの演技だと思うんだけどなぁ。歩き方も動きもいつものまんま。ただコミカルな演技が演出上ないことから笑顔を作ってないだけであり、シリアスな表情で泣いているシーンを観ただけで新境地扱いするのは短絡的でどーかと思うよ。
ま、何はともあれ、片親で育った少年時代を過ごした人にはグッと来る作品なのは間違いないので、リメイク版の『ベスト・キッド』ではなく、そして青春映画でもなく、キッズ向けのジャッキー映画として観ることによってテンションが上がるはず。自分がそーだったから(笑)。


最後にオマケ。折角なんで『ベスト・キッド』のゲーム版にも触れておこうかな。『ベスト・キッド』のパート1は海外仕様のファミコンであるNES版で発売されており、


『ベスト・キッド2』はATARI ST、AMIGAのパソコン向けで発売されていた(現在は入手困難)。

そしてリメイク版『ベスト・キッド』に関してはiPhone&iPadでダウンロードコンテンツとしてリリースされているんで興味ある人は要チェック!

                                              text by吉田 味庵(元ジャンクハンター吉田)

『ベストキッド』
8月14日(土)、新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
父を亡くした少年と、哀しみを背負うカンフーの達人。師弟を超えた絆が心を打つ。
【ストーリー】
父を亡くし、母とふたりで新生活を求めてアメリカから北京に引っ越してきた少年ドレ(ジェイデン・スミス)は、言葉も文化も違う新しい環境になじめず、地元のカンフー少年チェンたちにいじめられる毎日。逃げ道ばかり探していたドレは、ある日、マンションの管理人ハン(ジャッキー・チェン)に助けられる。実はカンフーの達人であるハンは、「自分を守るために使う」条件でドレにカンフーを教え始める。ひたむきに訓練を重ね、逃げずに立ち向かうことの大切さも学んでいくドレ。そしてついにチェンとのカンフー決戦に臨むこととなる……。
監督:ハラルド・ズワルト (『ピンクパンサー2』)
製作:ウィル・スミス、ジェイダ・ピンケット・スミス
出演:ジェイデン・スミス (『幸せのちから』)
ジャッキー・チェン(『新宿インシデント』『ドラゴン・キングダム』)
エンディング・テーマ曲:ジャスティン・ビーバー「ネヴァー・セイ・ネヴァー feat. ジェイデン・スミス」
[公式サイト]
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