第18回  『ザッツ・マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生』

小宮山雄飛の東京DVDライフ 第18回  『ザッツ・マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生』



文章/小宮山雄飛
画/黒木裕貴
今回紹介する映画は、トム・ハンクスの息子コリン・ハンクスが主演なのですが、なんと言いますかね、二世落語家の襲名式の見てるような、そんな映画であります。



『ザッツ・マジックアワー ダメ男ハワードのステキな人生』



とにかく若い頃のトム・ハンクスそっくり!


それだけで観てる人は映画の内容どころではありません。


さらにお父様本人も出て来る!(そもそも製作がトム・ハンクス)その時点で完璧に視線はお父さんの方に行ってしまいます。


さらにお父さんとの関係か、はたまた息子さんへのご祝儀か、日本ではDVDリリースのみのマイナー作品なのに有名人がわんさか出て来ます!


本人役でジェイ・レノやマーサ・スチュワートまで出て来ちゃう辺り(しかもセット含めそれらの番組の映像をそのまま入れちゃう辺り)もうトム・ハンクスによる、息子の大お披露目会といった状態です。



内容の方ですが、まず最初に言いたいのは、この映画は実在した奇術師を元に製作されてるんですが、そのことは映画の最後にテロップで出て来るだけなんですよ。


これはすごく損だと思うんです。



最初から実話が元と思ってれば「へー、こんな人いたんだ!」と思うとこも、言われてなければ単なるキャラ設定かなと思ってしまう。


デヴィッド・フィンチャーの『ゾディアック』もそうだったんですが、実際に起きた事件を描いてるのにそのことが最初に説明されない(アメリカ人なら誰もが知ってるのかもしれませんが)。


最初から実話と分かってたら「え、こんな事件があったんだ!」と驚きが全然違う。


そこは映画の作り方云々というより、伝え方としてすごくもったいないと思いましたね。



という訳で、これからこの映画を観る人は、こんな人が実際にいたんだよ、というのを分かってから観た方が倍楽しめると思います。



ほんでもって、肝心の内容の方ですが、ぶっちゃけて言いまして僕には何が言いたかったのかさっぱり分からなかった・・・。



面白くないという意味じゃないんですよ、テンポもすごくいいし、出演者の演技もすごく良い。でもとにかく淡々と描かれていて、どこで盛り上がってどういう見方をすべきなのかが最後まで分からないんですよ。


たぶん、ほとんどの人がそう思うんじゃないですかね?



じゃあなんでわざわざ紹介するのかと言いますと、マルコヴィッチ演じる奇術師とそのロードマネージャーの関係というのが、言ってみれば芸人とその弟子みたいなもので、僕の環境にすごく似てたんですね。



出番前のピリピリした空気や、芸人特有のこだわりなど、そういう部分がすごくうまく描かれてる。


時には理不尽に怒ったかと思うと、他の誰も気付かないような小さなミスや場の空気をしっかり読み取ったり、色んなドタバタがありながら地方を点々とツアーしていく芸人の姿が、自分とマネージャーの関係にものすごくかぶってしまった。



いや、単に自分とかぶってたから面白いということではなく、そこの描き方がものすごくしっかり出来てるなと。そりゃートム・ハンクスが製作して息子を出すくらいですから、芸人・エンターテイメント界の裏側の描き方だけはさすがにプロ中のプロです。



なのでね、この映画はそこを楽しみましょう!という説明が最初からあって、そのつもりで観ればすごくよく出来たハートフルコメディだと思います。



にしてもトムハンクスが画面に出て来るだけで(2度出て来るんですが)、完璧にトムハンクスに持ってかれちゃうから、親としてはそこはぐっと堪えて、製作者サイドにいても良かったのでは?とも思いますね。


とはいえやっぱ出て来ないと盛り上がりが全然違うっしょ・・・


息子の襲名式で息子より目立っちゃう落語家みたいなもの。


難しい選択ではあるなあ・・・。



この映画はそんなトムハンクス親子の微妙な関係を深読みしたり、ショービジネスの世界の裏側を見る、という意味ではすごく楽しい作品だと思います。



小宮山雄飛(ホフディラン)

ミュージシャン
1973年8月14日生まれ
1996 年「スマイル」でホフディランのVo&Keyとしてデビュー。「遠距離恋愛は続く」「恋はいつも幻のように」「欲望」「極楽はどこだ」など、ヒッ ト曲を多発し、FUJI ROCK FESTIVALへの参加、日本武道館でのワンマンライブを成功させるなど、ライブでも活躍。日本のポップシーンにおいて根強い人気を誇る。デビュー以 来、シングル19枚、アルバム9枚(ベスト盤含む)をリリースしている。
絶賛発売中のニューアルバム『ブランニューピース』(DVD付き初回限定盤)に収録されている『恋人たち』『ニューピース』のPVでは、自ら監督を 務めるなど、多才な一面を持つ。2009年7月3日には、渋谷C.C.Lemonホールにて、デビュー13周年記念ライブを行い大成功!その模様を収録し たライブDVD『13年の金曜日』においても監督を務め、11月4日にライブCDとともに同時リリース、絶賛発売中! 
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZOへの出演も決定!
2010年7月3日(土)
ホフディラン ワンマンライブ
『14年の土曜日』
会場:SHIBUYA-AX
open 18:00 / start 19:00
チケット料金:3980円(ドリンク無し!)
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ゲスト:ゆってぃ / and more…
問い合わせ:HOT STUFF 03-5720-9999
5/9からの一般発売に先駆けて、HP先行予約を受け付けます!
受付期間   4月19日(月) 12:00 ~ 5月5日(水) 18:00      
  ※専用URL http://eplus.jp/hoff-hp2/   
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黒木裕貴(クロキユタカ)
東京生まれのイラストレーター。
CDジャケットや書籍・雑誌、アパレル等で幅広く活躍中。
また、影絵やコマ撮り作品をつくる映像作家としての顔も持つ。
official website http://www.kurokiyutaka.com/
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