映画レビュー 『燃える仏像人間』


京都で仏像盗難事件が相次ぎ、女子高生の紅子(声:井口裕香)は実家である寺の仏像を盗まれた挙句、両親までも惨殺される。彼女は両親の旧知である円汁(声:寺田農)の寺に引き取られ、彼から「盗賊集団シーダルダの仕業」だと聞かされる。円汁の秘密の部屋に舞い込んだ紅子は、両親と仏像が融合したかのような生命体と遭遇するのであった…。

奇怪かつ不気味なヴィジュアルが独特な世界観を築き上げた本作は、切り絵を背景上で動かせる“劇メーション”なる手法(TVアニメ『妖怪伝 猫目小僧』同様!)を用いたことで一風変わったアニメに仕上がった。京都在住の若手クリエイター宇治茶が監督・脚本(作家・中沢健と共同)・作画・撮影・編集を単独でこなし、衝撃的なデビューを飾った。


登場するキャラクターがキモくておぞましいヤツらばかりで、暗く歪んだ異空間は時には地獄絵図を形成。さらに、下半身を切断された紅子の両親、ガラスの破片が額にグサりと突き刺さった医師などグロいシーンも容赦なく見せつけてくれるのでなかなか恐い。

また、声の演技人も異色のキャスティングで興味深い。主人公・紅子を人気声優の井口裕香が務め、最初と最後の実写パートにも出演。大物俳優の寺田農、『ウルトラマンエース』のヒロインでお馴染みの星光子、松竹芸能所属の中堅漫才コンビであるシンデレラエキスプレスの渡辺裕薫、素人ものまね番組で過激な下ネタギャグを連発させたレイバー佐藤、亡き夫でもある実相時昭雄監督の作品群をはじめ多くの映画やTVドラマで名脇役を務めた原知佐子…バラエティーに富んでいてホント贅沢だ!オマケに主題歌「Moe-Butsu」をTVバラエティー『ロケみつ~ロケ×ロケ×ロケ~』でおなじみの女性お笑いタレント桜 稲垣早希が歌唱!!

奇抜なストーリーと奇妙なシーン、凄まじい画力が観る者を圧倒させる珍味なアニメ映画。ホラー映画ファンにもオススメ!

レビュアー:佐々木 貴之

『燃える仏像人間』5/18(土)公開

【スタッフ】
監督:宇治茶
総合演出補:丸山祐司

【キャスト】
少女:井口裕香
執事:北岡龍貴
紅子:井口裕香

(C)キネマ旬報社









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