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更新 2007年10月05日

第3回 株式会社カプコン 稲船敬二プロデューサーに独占インタビュー!

Text by ジャンクハンター吉田

 稲船プロデューサーにインタビューするのは、PS2で『鬼武者2』が発売される際に映画秘宝本誌の連載コラム内で行なった以来 大変ご無沙汰。現在、カプコン常務執行役員でドワンゴグループと共同で立ち上げた新会社ダレットの代表取締役社長にも就任した稲船敬二氏 (映画秘宝の愛読者!)はご多忙の中、 映画秘宝.com内の「シネマゲーム★バカ一代」の連載枠でなんと独占インタビューに成功。 『デッドライジング』や『ロスト プラネット 〜エクストリーム コンディション〜』に関しての話などを根掘り葉掘り聞いてきたのだ!  さらにコメント動画まで、ちゃっかりと頂いて来たぞ!  

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コメント動画(00:18)

■『デッドライジング』で『バイオハザード』のイメージを払拭させたかった

―― カプコンと言えば『バイオハザード』のイメージが映画秘宝読者には根強いんですが、なぜ『デッドライジング』なるタイトルで新しいゾンビゲームを出したのですか?

稲船 「バイオハザード=カプコン」……この強烈なイメージが付き過ぎているのを払拭したかったのも理由ですが、僕の中でもゾンビと言うのが、アレじゃないんじゃないかな? って気がしたところから新しいゾンビゲームを作っちゃおうと。 そのアレとは、ゾンビ映画ファンの僕の個人的な見解なんですけども『バイオ〜』はちょっとゾンビが怖すぎるし、 カッコ良過ぎる感じがするんです。もっとゾンビってバカなんじゃないかなって思ってしまうんですよね。 ゾンビはもっとコメディ的要素も存分に備わっている素材なんじゃないかなって。 僕らは笑えて、楽しく、爽快に遊べるゾンビが主人公のゲームを作りたいなって考えから『デッドライジング』を誕生させました。 『バイオ〜』はゾンビが出演しているゲームだと思うんです。ゾンビが主役ではないんです。

―― 確かに言われてみれば『バイオ〜』はゾンビが主役じゃないですね。

稲船 脇役ですよね。ゾンビも出てるみたいな(笑)。遊んでみてわかると思うんですが、今回はストイックにゾンビしか登場させてないんですよ。 『バイオ〜』に出てくるような蜘蛛の化け物とか、人間離れした生体など、そういう奴らを全く省いているんですよ。 基本は「ゾンビvs人間」。その中でもゾンビより怖いのは追い詰められた時の極限状態の人間なんです。これは ゾンビ映画を撮る監督も劇中では大抵同じような描き方していますけど。やっぱり色々なゾンビ映画を観てて感じたのが、本当に怖いのは人間なんだと。 でも、ゾンビは集団だと怖い。ゾンビって一人だと誰も怖がらないですよね。これが10人とか30人に囲まれると、初めて怖いと感じてくるわけですよ。

―― Xbox 360のゲーム機だからこそ『デッドライジング』は作れたんですよね?

稲船 今までのゲーム機だと、10人のゾンビでしか囲まれなかったのが、Xbox 360だと300人以上のゾンビで一斉に囲まれる時があるわけです。 すると、どうやって逃げるのか? どうやって道を切り開くのか? と言う追い詰められた感がプレイヤーに課せられる。 映画にゲーム機がようやく辿り着き、本当のゾンビゲームが作れるゲーム機がやっと登場してくれたんです。 それまでの現行ゲーム機では、ハードウェアのスペック的問題で作りたくても作れないゲームって沢山あったんですよ。 それが『デッドライジング』であり、冬に発売を予定しているイ・ビョンホンが主役の『ロスト プラネット』でもあるわけです。PS2ぐらいのスペックだと『デッドライジング』は作れなかった。『デッドライジング』っぽいモドキは作れたと思いますがそんな妥協は僕らはしたくなかったし(苦笑)。

―― 『デッドライジング』というタイトルも良い響きでカッコイイですね!

稲船 タイトルにもモチロンこだわりました。「死人が湧き出てくる」との意味で『デッドライジング』とタイトルが付けられたのはラッキーでした。実は色々と商標登録が大変だったんです。『デッドなんとか』っていう名前が殆ど取られてたんです。『デッドライジング』は、たまたま商標で空いていたから付けられたわけなんです(笑)。

―― 今回は大きなモールが舞台だったじゃないですか。ショッピングモール以外での舞台は何か考えていなかったんですか?

稲船 作り始めた時には舞台を決めていなくて、ショッピングモールで展開するアイデアが最初に来たわけではなかった。ただ、ゾンビをどこに閉じ込めるの? って開発チームとアイデアを出し合った際に、閉鎖された空間で沢山ゾンビと戦える道具が揃っている場所を考え始めたら、一番最初に浮かんで来たのが様々なお店が集合しているショッピングモールだったんですよ。しかもゲームそのものの舞台はアメリカでなくちゃダメだったんで、アメリカの消費社会の象徴と言えばショッピングモール! ハンバーガー屋かショッピングモールが今のアメリカを象徴しているでしょ。さすがにハンバーガー屋には食料はあるけど狭すぎるし戦える武器はないから却下。ショッピングモールなら銃も使えるし、チェーンソーなどの日曜大工道具も使えるしでバリエーション自体が豊富。これぞゲーム向きだって思った。地下駐車場とかショッピングモールのエリア内であればどこへでも行けるようにしているし、全てのスペースを無駄なく使って、エンディングもいくつも用意してゲームでしか実現できないような遊びを工夫して作りました。

―― 地下駐車場は凄かったですね。ゾンビだらけで初めて足を踏み入れた時はさすがに驚きました。

稲船 駐車場に大量のゾンビを投入したかったんですよ。そして車で轢きまくりたかった(笑)。車や自転車など乗り物で轢き倒す楽しみをプレイヤーにどうしても味わってもらいたかった!

―― このゲームをやっちゃったら、もう『バイオハザード』には戻れないです。

稲船 え!? 『バイオ〜』できないですか(笑)?
―― 『デッドライジング』に触れたことない人にはわからないと思いますが『バイオ〜』とは自由度が段違いに違うんで……。買って遊んでみれば違いがわかるかと。


■ゾンビ好きとプロレス好きはどこかでクロスオーバーする!?

稲船 日本人の悪いところって、フラグゲームな考えでプレイする人が圧倒的に多い。どうやってフラグ立てるの? って意識しながら遊んでますよね。『デッドライジング』にも一応フラグはあるんですけど、別に立てなくてもOK。立てなくてもサクサク進められるようにしました。エンディングの分岐がフラグ立てによって変わったりもしますけど。

―― 日本よりもアメリカのゲームのほうが確実に自由度重視で作られた作品は多いと思います。

稲船 日本のゲーム自体にも自由度少ない作品が多いから、フラグ立てプレイになりがちになってしまうような気もします。本作のような閉じ込められた空間でゾンビがいないと自由度が与えられても何をしたらいいの? ってなっちゃうけど、最初からゾンビだらけの場所なわけで何したらいいのかって考える暇はないんです。A地点からB地点へ進むまでにゾンビが大量にいるんで、まずは倒さなくちゃいけない。倒してから進む。で、倒すのに何使うの? ってなると、お店から武器になりそうなものを奪って使っても倒してもいいし、素手で殴ってもいいし、ツバをかけてもいいし。

―― ある特殊に混合したドリンクを飲んだ後、ツバに攻撃力が備わっていたのにビックリしました(笑)。芸が細かすぎますよ。

稲船 フライパンをコンロに置いて熱すればジューってゾンビの顔を焼いて倒したりもできれば、バーンって殴ることもできるし、本能的に自由度高く遊べるように細工は施していますよ。


―― 誰もが謎に思うはずですが、プロレス技を駆使してゾンビを倒せるようにしたのは一体なぜ?。

稲船 色々と作りながらプレイしていくと、攻撃バリエーションには飽きが訪れるじゃないですか。普通に殴るって行為も飽きが来ますよね。段々と「面白いことなら何でもやっちゃえよ!」って悪ノリが進化して行ったら、ゾンビにプロレス技を仕掛けるのって面白いよねと。日本人って凄くプロレス好きじゃないですか。だから、ゾンビファンはプロレス好きだろうと勝手に決め込んで(笑)、フェイスクラッシャーやジャイアントスウィング、投げっぱなしジャーマンスープレックスなど、ゾンビとプロレス技で戦えるようにしたわけなんです。ツバを女性キャラクターに「ペッペ」とかけると、ちゃんと嫌がるんですよ。それでもしつこくしていると怒られたりして……。女性キャラクターのセクシーショットを撮る行為だって、カメラを持っていたらやりたくなるでしょ。18禁のレイティングだからこそ、こんな悪ノリができたと思いますけどね。『デッドライジング』そのものに残虐描写だけをクローズアップしてもらいたくないのが本音。自由度高い遊びがまだまだ眠っているからね。そういった部分にも着目してもらいたいところです。

―― 色々と簡単な条件から厳しい条件まで満たして行くと、ロックマン・リアルメガバスターやホッケーマスクなど手に入るじゃないですか。やり込み要素高めた仕様は何度でも遊ばせてくれますし、主人公があれだけ着せ替えキャラになるのも珍しいかと。

稲船 後半では特殊部隊などに捕まるとパンツ一丁で裸にさせられるし、条件満たせばアーサー・パンツ(魔界村のアーサーが履いていたパンツ)とかも出てきますからね。裸でやる面白さを堪能してもらいたいです(笑)。結構、凶悪なぐらい悪ノリです。

―― プロレスラーになりきるためのタイツやシューズなど大爆笑なアイテムも遊びまくれば入手できるし。

稲船 女装も笑いを取る為に入れました。ここまでやるのかよってユーザーに思わせたかったんですよね。普通はゲームを作っていると企画段階で出てきたアイデアはある程度ボツになるものもありますけど、全部オッケーにしました。やり過ぎとユーザーに言わしめたいですね。

―― 主人公の設定がフォトジャーナリストなのも面白い要素の一つです。写真を撮る行為が最高ですね!

稲船 初めて遊んだ人はカメラなんか全く意味もなさないと思うんですよ。ゾンビ倒してレベルアップしながら時間を進めて行かねばならないし、写真撮っている暇なんかないんです。最初はゾンビを倒すのに必死になるのが普通ですから。でも、何度か遊んでいるうちに自分が強くなって行くと余裕がでてくるじゃないですか。そうしたら、撮り始める丁度良い頃合です。

―― 撮影する楽しさではオープニングシークエンスのヘリコプターでショッピングモールへ向かう時が最高潮でした。人がゾンビに襲われて殺される瞬間をファインダー越しに覗いて撮りまくる瞬間が!

稲船 あのシーンはリアルでしょ。あそこの導入部分はできるだけリアルにしようとマジメに作ったんです。あとからドンドンとコメディになって行くんで、人が殺される瞬間を空撮して、フォトジャーナリスト気分をプレイヤーに認識させるのが目的。ショッピングモールへ行くと写真撮るの忘れちゃって、あっと思い出したときにカメラ構えるようになるのがオチですが(苦笑)。映画秘宝ファンの人は女性が屋上から落下するシーンは気に入ってもらえるかと。


■『シャドウ オブ ローマ』の反省点が生み出した本作のポテンシャル

―― そういえば……『デッドライジング』はPS2で以前発売されていた『シャドウ オブ ローマ』とゲーム自体のエンジンが似ていると思うんですが?

稲船 ゲームのエンジンは全然違うんですけど『シャドウ〜』の思想はそのまま『デッドライジング』へ持って来ています。『シャドウ〜』も僕にとってはコメディなんです。プロレス技を仕掛けたりとかね。僕がやりたかったことが日本人にも外国人にも古代ローマでは理解されないならば、もっとバカげた場所、バカげたシチュエーションで勝負してやろうと。それでゾンビにしたんです。と言うわけで、やっている発想とか思想とかは『シャドウ〜』と一緒なんです。

―― 開発時期的には『シャドウ〜』が終わってから『デッドライジング』の製作に入ったんですね?

稲船 そうですね。タイミング的には丁度それぐらいの時期だったと思います。『シャドウ〜』開発チームの半分が『デッドライジング』へ魂を引き継ぐ為に加わりました。残りのメンバーは『ロスト プラネット』チームへと別れたりしましたが、『ロスト〜』のチームも協力してくれたりと『シャドウ〜』で培った遺伝子を見事に『デッドライジング』へ残してくれましたね。やっているノリは同じだったんで、開発にはやりたいことの表現は伝えやすかったです。例えて説明するならば、素材が良くても料理の仕方を間違うと美味しくないわけです。中華に合った素材とかイタリアンに合った素材とか、料理そのものに合う素材と言うのは必ず用意されているんです。つまり、レシピを間違って調理したのが『シャドウ〜』だったんじゃないかとの反省があったから『デッドライジング』の完成度は一層高まったと思います。

―― 『シャドウ〜』は日本版と海外版では別物のようにゲームが修正されてますよね。海外版はブルータルなシーンがテンコ盛りで大変面白かったです。海外版こそがまさに『デッドライジング』の原型ですよ。日本版だと表現を抑えなくちゃいけなかったので不遇に終わったのが非常に残念でした。

稲船 原型と言えばそうでしょうね。『デッドライジング』がカプコンとしても国内初のZ指定であるので、今後もデリケートにゲームを作って行きますし、倫理的なものの在り方も考えて行きたいと思ってます。

■『ロスト プラネット』でイ・ビョンホンさんを起用した本当の理由とは?


―― 『ロスト プラネット』なんですけど、イ・ビョンホンさんがメインのキャラクターになっているはずが、あまりそのこと自体を表に出してないですね。

稲船 そうですね。本作に関してはゲームの質がユーザーから評価の対象になると思っていますので、イ・ビョンホンを表に出さなくてもいいかなって言うのが理由です。

―― ゲームの内容って凄いですね! 良く丁寧に作られてますねぇ。あそこまで激しく色んなことができる三人称視点のゲームってなかったんじゃないですか? こちらも『デッドライジング』同様にやり込めそうな期待と予感大です!

稲船 やり込める要素は入ってますよ。見た目の派手さも先発の『デッドライジング』に負けないよう作っています。

―― 正直なところ……イ・ビョンホンさんじゃなくても良かったんじゃないですか? ゲームの完成度が良いからキャラクターゲーム的な扱いされると『ロスト プラネット』自体が霞んでしまうような気が……。

稲船 まぁ、そう言われちゃうと誰でも良いってなっちゃいますけどね(苦笑)。

―― 韓流ファンのオバ様たちがXbox 360と『ロスト プラネット』をセットで大人買いでもしたら奇跡です!

稲船 実は本作に限っては日本のマーケットをメインで考えていないんですよ。イ・ビョンホンを使っているから日本を意識していると言う考えではなくて、アジアを軸にネームバリューで世界各国に持って行きたい戦略構想を持っているんです。北米や欧米はそれなりにXbox 360のゲーム機自体が売れていますが、日本以外のアジア圏って意外とゲームメーカー自身が視野に入れていないこともあり、ゲーム機の普及がイマイチなわけです。ゲーム業界と言う括りの中でアジア諸国でも注目されるネタが欲しかったし、当然、韓国でも売れることを願ってます。

―― ……で、なぜにイ・ビョンホンさんを起用したんですか?

稲船 アクションをやれる韓国スターで強い人って限られてるから……。

―― そこでイ・ビョンホンさんしかいないと?

稲船 はい。それと僕はゲーム好きな人とじゃないと一緒に仕事をやりたくなかったこともあって。 イ・ビョンホンさんもゲーム好きでしたし、やはりゲーム好きじゃないと僕らの世界って理解されないじゃないですか。理解してくれない人だと、ここがダメだとか、こういうセリフがダメだとか言って来るんですよ。ゲームなんで……って言う部分がわかってもらえないんですね。そういう面では、イ・ビョンホンさんは柔軟に対応してくれて、仕事はやりやすかったですよ。

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 折角なので第二回で予告したCEROの倫理的箇所の審査基準などに関して伺おうと思ったのだが、そこまで話が辿り着く前にタイムアップ。稲船プロデューサーから伺うチャンスを逃してしまったが、CEROのレイティング問題については今後も言及して行きたいと思う。各ゲームメーカーさんや専門誌に関わるマスコミ関係者からも話を伺いつつも、最終的にはCEROへ直接、話をしに行こうと思っている。白黒つけるべき問題なんでね。

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