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更新 2007年07月26日

第13回 エロゲーだっていいじゃないか! ニトロプラスを直撃!(後編)

Text by ジャンクハンター吉田

 というわけで前回の続きです。幸いなことに映画秘宝.com編集部より徒歩10分程度で足を運べる距離にあるニトロプラス。早速突撃し、空想科学マカロニ大活劇『続・殺戮のジャンゴ 地獄の賞金首(邦題)』のシナリオライター虚淵玄(うろぶちげん)氏へインタビューを敢行! タイトルに”続”が付いているけど別に本作はシリーズ物でもないし、ジャンゴが出てくるわけでもない。このタイトルにしたのはマカロニ好きな方々へもキャッチーになるかとのアプローチ的狙いと、タイトルを見た人は大抵質問してくるらしく、憶えてもらいたいゆえの狙い通りな戦略だったそうな。うーん、遊び心満載だ(笑)。


■マカロニウエスタンの持つポテンシャルをゲームで昇華させる虚淵玄の熱き魂!

――なぜ今、マカロニウエスタンをゲーム化しようと思ったんですか?

虚淵 マカロニウエスタンっていうジャンルの名前だけが世に残ってて、わりと理解されてないな、もったいないなっていう思いがあったんです。雰囲気だけじゃなくて過去のマカロニ映画の設定なりプロットなり名シーンなりを芝居として入れた上で、露骨にオマージュっていう勢いのものをやってしまおうというのがありまして。まぁそれが良いかどうかは置いといて、このゲームはマカロニ映画のツギハギなんですよ。わからない人はこれを手がかりにいろんな映画を観てみると元ネタがわかる、手がかり集みたいな部分も狙って入れたんです。

――まさに『キル・ビル』みたいな感じじゃないですか。

虚淵 まさしく、そのノリです。『キル・ビル』が楽しかったから数々の元ネタも観てみる……そういう形で入り口になって、今の若い人達がマカロニウエスタンを知ってくれればいいなというのが狙いでもありました。

――虚淵さん自身もマカロニウエスタン好きだったんですか?

虚淵 好きですね。まぁ生粋のマニアの方々には負けますけども(苦笑)。やっぱり憧れはありますね。ただ良さに気付いた時には市場ではあまり在庫切れ状態でして、当然ビデオもDVDもかなり手に入りにくかったんで、結構観るのには苦労しました。

――ここ数年ですもんね。男気あるメーカーからDVDがリリースされたのって。

虚淵 けどそれも、初回だけプレスされてスグに絶版とかばっかりなんで、なかなか定番としてお店に並んでくれないんですよね。それが悔しいっていうのはあります。コンシューマーでマカロニウエスタンっていうのも、日本ではカプコンさんから発売された『レッド・デッド・リボルバー』が2年ちょっと前に発売されたくらいで……。ドカーンと売れてくれれば良かったんですけど、残念なことに中々地味な終わり方しちゃったし……。

――『レッド・デッド・リボルバー』はカプコンさんが経営難に陥った時代にロックスター・ゲームスへライブラリー売る前は、モリコーネの『ガンマン大連合』の曲が入ってたりして正直、凄いゲームになるな、って思っていたんですけど、随分作り直されちゃいましたからね。続編はPS3で作ってるらしいです。発表になってないっぽいですが(苦笑)。

虚淵 それはちょっと期待できますね! 僕も一応買ったんですけど、とっつきにくさでソンをしてるなってのが感じられました。もうちょっと敷居を低くした作りだったら良かったのにもったいなかったです。

――カプコンさんで作っていた時のVer.がコンシューマーのノリなんでチュートリアルも充実していたりと、操作もやりやすくなっていたんですけどね。ロックスター・ゲームスでリファインされたVer.になって随分とコアなユーザー向けに作り直されちゃって……。

虚淵 まぁ、今時マカロニ好きな人はコアだという思いがあったんでしょうね。


――世界的規模で見るとマカロニ=コアですよ……確かに。

■美少女ゲームで敢えてピカレスク物へ挑む!

虚淵 マカロニの精神って今の王道のゲームで言えば、『ドラクエ』なんかの根っこにあるっていう気はするんですよね。そこのルーツとして、今の人が観ても面白いと思うんですよ。古臭さを抜きにしても。もうちょっと見直されてもいいジャンルだと思います。

――マカロニといえば元々のスタンスが復讐劇ですが若い人たちからすると古臭いのかもしれないですね。『キル・ビル』なんかはまさに復讐劇で、あれはマカロニの王道をいっていたわけですけど。

虚淵 あのようなピカレスク物って今はダメなんですかね。「努力、友情、勝利」じゃなくて「強欲、裏切り、復讐」というね(笑)。

――昔はそれが一番刺激的で幼い頃は、そんな作品ばかりで育ったはずなんですけどね。今は泣きの要素が入らないとやっぱりダメなんですかねぇ……。どうですか? 最近の18禁のゲームとか、泣きの要素が結構なウェイトを占めてると思うんですけど。ニトロプラスさんは泣きとか萌えとかを排除してるじゃないですか?

虚淵 シナリオを書いている僕からすると自分なりの泣きとか萌えとかは入れてるんですけど、世間とはズレているんでしょうかね(苦笑)。書いているこっちは萌えまくり泣きまくりなんで、何がおかしいのかわからないくらいなんですけどねぇ。

――美少女ゲームに対するユーザーの価値観が一定の間隔で変わってきてるから欲しちゃうような気もします。僕自身はあまり泣きゲーとかやったことないんでわからないんですけども……。

虚淵 美少女ゲームっていうジャンルそのものが大いにマカロニ的だと僕は思うんですけどね。パクリ上等、娯楽至上主義、アカデミックな評価なんか一切眼中にないという。この快楽主義的な部分っていうのは、その昔、粗製濫造されたマカロニウエスタン映画に通じるものがある。同じ精神性で今作られているのが美少女ゲームだと思うんですけど。多少のパクリで目くじら立てられるはずもなし、面白ければいいだろうってどんどんアイデアを盛り込んで。設定だの時代構成だのは完全に二の次で。そういう娯楽一辺倒の作り方ってのは、今の美少女ゲーム業界は、かつてのマカロニの位置なんじゃないかなって気がするんですけど。

――マカロニは衰退しちゃったけど、美少女ゲームは衰退してないのがまたちょっと哀しいですね……。

虚淵 ま、10年、20年経ったらわかりませんよ。

――マカロニ好きな人達は30代後半から上の世代だったりしますもんね。

虚淵 完全に客層ずれまくってるんですよねぇー。

――そう! ですから今回の『続・殺戮のジャンゴ』は凄く冒険だと思ったんですよ!

虚淵 メインのラインを受け持ってくれる若いライターさんが結構あとから出てきてるんで、僕はわりと会社を背負ってるというプレッシャーを抜きにして作らせてもらえる立場になってるんですね。昔ブランドの礎となるゲームを作ったご褒美って形で、何をやってもいいといった状態になってますんで(笑)。普通こんなの企画書の段階で止まりますよ。

――僕もそれは思いました。これは企画を通した人が一番偉いのかなって(笑)。

虚淵 まさしく、それはウチの社長ですね。もう好きにしろって状態でやらせてもらってます。

■マカロニに置ける拷問シーンをレイプに置き換えて18禁に!?

――映画畑の人間でありながら、ゲーム好きな者から言わせて頂くとマカロニをアドベンチャーゲームで作り上げること自体が凄いと思うわけですよ。普通はガンアクションとかを想像しますけど、斬新な切り口が興味そそられた要因でもあるんですが……マカロニにアダルトゲームの要素なんてことも想像できなかったし(苦笑)。

虚淵 マカロニって必ず拷問のエピソードが入るじゃないですか、あれをそのままレイプに置き換えてるだけのことなんで。セリフなんかそのまま頂いちゃったりしてますし(笑)。だから往年のファンは、大喜びするか怒り狂うかのどちらかだろうという気がしてます(苦笑)。

――作り手側はある意味そういうパロディ精神やオマージュ精神も必要じゃないですか。そこはみんな寛大に見ますけどね。

虚淵 マカロニも一本背骨の通った、善悪とはベクトルが違いますけどどう意地を通すかみたいな。そこは一応しっかり押さえてますし、やっぱりマカロニだとメキシコ軍は悪であるわけですし(笑)。

――虚淵さん自身が一番お気に入りのシーンは?

虚淵 発売前でネタバレになっちゃいますけど、やっぱりラストの決闘シーンですね。それは西部劇の時代構成では無理なシチュエーションになってます。一応設定はSFだからできる決闘シチュエーションをやってみたんでそこは自分なりに遊ばせてもらいました。それと音楽の方も頑張っていい曲を作ってくれてますし。

――まぁ、マカロニが題材ですから最後は決闘で締めくくるのは恐らく誰しもが予想しているかと思いますよ。全然ネタバレじゃないですって。では、虚淵さんが一番好きなマカロニ作品って何かあります?

虚淵 やっぱり好きで好きでたまらないのと大筋でふんでるのは『ガンマン大連合』ですね。あの気の抜け方と、締めるところは締める熱さが。あとは渋さでいうと、人によってはマカロニじゃないと思うかもしれないけど『ウエスタン』なんですよ。あれは僕的にはマカロニの笑いの要素だけ排除して、ただ格好いい要素だけの煮凍りみたいな部分で。ただ結構長いのでお勧めしかねるんですけどね。最初に『夕日のガンマン』あたりで釣ってから『ウエスタン』を薦めるようにしてます(笑)。

――確かにクリント・イーストウッドあたりから入ってくるとある程度敷居は低くなりますよね。

虚淵 真面目なマカロニとしては『ウエスタン』のドラマ性というのは伏線というか泣かせ方というか、王道的でもありますし。西部の時代が終わって男が去っていくっていうあの終わり方がたまんなくて。その前に過去の清算だけは済ませていく。マカロニからはちょっと外れてしまうけど傑作だと思います。

――ちなみに『続・殺戮のジャンゴ』って開発期間はどれぐらいだったんですか?

虚淵 一旦中断してるんでかなり長いんですけど、延べ日数で言ったら一年はかかってないかな。裏でチマチマ進めてた作業だったんで、最後にガツンと半年ぐらい集中してやりましたけど。そんなに長くかけたものではないですね。

――プレイ時間は大体どれぐらいかかります?

虚淵 しっかりフルボイスの声を聞くかとかプレイヤーにもよりますけど、大体一日、二日でクリアできちゃうと思います。一週間コースとかじゃないです。僕自身が長い話が苦手なので展開を急いじゃうタイプなんで、ダラダラと長い話にはしないようにして終わるよう心掛けてます。

――敵のキャラクターが、どこかで見たことあるような人達で。

虚淵 登場キャラに関しては実在のマカロニウエスタン作品に出演していた役者さんから模写してくれって言ってあったんで(苦笑)。マカロニ好き以外でこのキャラは誰々って全部わかったら凄いと思いますよ! 映画好きな人は「これ誰々に似てない?」ってわかると思うんですけど。

――虚淵さん的にシナリオ箇所で一番詰まったところってどこですか?

虚淵 やっぱりネタの繋ぎ方ですよね。そこさえ上手くいけばあとは楽勝じゃんって思っていたんですけども。やっぱり欲張りたかったんで、このネタを突っ込みたいとか、かなり要らないところで悩んだってのはありますね。逆に時間が足りなくなって締め切りって言われたから諦めて一気に書き上げました。それがなかったら永遠にやってたかもしれないですね(笑)。

――逆にカットしちゃった部分もあるんですか?

虚淵 数限りなくあります。途中で割り込む用心棒にトリプルジョーとか出したかったんですけどね。黄金のジョー、ドラゴンのジョー、盲目のジョーと。

――ゲーム好きだけじゃ多分みんな知らないですってば(笑)。


■『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』と『続・殺戮のジャンゴ』は思想が似ている!?

――イーストウッドは遡っても『ダーティハリー』までしか知らないって人もいたり、今の世代は『ローハイド』とかの西部劇時代とか知らないですからね。

虚淵 僕は貫禄付く前の跳ね返りのイーストウッドが好きなんで、やっぱりマカロニなんですよね。『許されざる者』なんかは凄い良かったですけどね。シルバー世代が喜ぶような渋い演技がいいです。イーストウッドが自分自身へのオマージュとして作ったんじゃないかと思うぐらい傑作でしたけど。

。 ――そういう意味では泣けますね……年取ったガンマン役。昔からああいう作品を観てると心打たれますよね。虚淵さんはこの手の作品はどれぐらいの数を観てます?

虚淵 そんなに多くはないですね。このジャンルの良さに気付いたのが大学のサークルでだったんで、そこから集められるのなんてたかが知れてますし、今回のゲームのために観かえしたのもあるけどせいぜい20本かそこらです。そういう意味ではまだまだ、僕なんかは映画ファンからするとかなり浅いですよ。

――他の映画とか観てると、マカロニウエスタンから派生したヒエラルキーもたくさんあるじゃないですか。そういうのは観てなかったんですか?

虚淵 マカロニウエスタンを観てから、これが始まりだったのねって驚きがあってハマリましたし、DVDでリマスターされるたびに「このボックスは買い押さえる!」とか、そういう感じでチマチマ観てたんで。逆に再放送全盛期にしっかり観たのがほとんどないんですよ。そこに関しては本当に悔しい思いをしました。DVD化されるのを誰よりも僕が望んでるって感じですね。頼むから昔のも見られるようにしてくれよって(苦笑)。

――9月に三池崇史監督作『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』が公開されますが、『続・殺戮のジャンゴ』も発売タイミングとしては絶好ですよね!

虚淵 確かにそうですね(笑)。やっぱりこの時期にマカロニを撮るってことは三池監督と話したわけじゃないですけど、僕らと気持ちは同じじゃないかって思いますね。「オマエらはマカロニウエスタン知ってるか?」っていうような。こういう娯楽があったんだって教えてくれるような気がしてならないです。精神性といいますか、背骨になる部分がマカロニであれば舞台なんかどうでもいいんじゃないかという気がしますけどね。それこそ時代劇でもマカロニはできますし。僕らも映画とは違いますがゲームでマカロニを作ろうと思った時点で、褒められよう尊敬されようっていう思いは全部消えましたからね。どれだけ楽しいと思ったことをやり尽くして他の人間を置いてけぼりにするかっていう勝負になってくるんで。そういうスノッブな評価を投げ捨てた上で娯楽に徹せられるっていうのは、やっぱりマカロニ的に一番大事なところだと思うんですね。もっと実も蓋もないところで面白いものだけ期待してお祭り騒ぎする場所であってほしいと思いますね。「俺はこのゲームをやったから、こんなにこの作品を理解してるから凄いんだ!」っていうものじゃない。このゲームはいくら理解しても何の自慢にもならないぞっていう部分が根底にあるんで(苦笑)。

――では、最後に『続・殺戮のジャンゴ』の一番の遊びどころ?

虚淵 やっぱり組み合わせのレシピを見破るところだと思いますね。面白いと思ったシーンはきっとどこか映画に原点があるように作っているんで。これを喜んでくれた人は、必ずマカロニウエスタンに賭けて損はしないです。この食材でこんなものが作れるっていうお料理なんで。

――うーん、まさにスパゲティウエスタンですね! パスタって何の料理にも合うじゃないですか。マカロニウエスタンって言われてるのは日本だけですけども(笑)。

●『続・殺戮のジャンゴ 地獄の賞金首(邦題)』
発売日:7月27日
対応機種:Win 2000・XP Home/Professional・Vista(※XP、Vistaは32bitのみ対応)
メディア:DVD-ROM
シナリオ:虚淵玄
原画:Niθ
定価:皆殺しパック/9,240円(税込)、通常版/7,140円(税込)
メーカー:ニトロプラス
対象年齢:18歳未満購入不可
●「ニトロプラス」ホームページ:http://www.nitroplus.co.jp/pc/
●ニトロプラスダイレクト:https://shop.digi-goods.com/





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