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更新 2007年06月28日

『吉祥天女』鈴木杏インタビュー

美しくも哀しい宿命を背負う"叶小夜子"というキャラクターを生み出した吉田秋生の 傑作コミック「吉祥天女」がついに映画化された。吉田作品が映画化されるのは『櫻 の園』(90)『ラヴァーズ・キス』(02)に続いて三作目。今回は『ラヴァーズ・キ ス』の及川中が再びメガホンをとり、金沢を舞台に撮りあげた。魔性のヒロイン・小 夜子を演じるのは、奇しくもかつて「六番目の小夜子」(NHK)に出演したこともあ る鈴木杏。その心の支えとなる女子高生・由似子に本仮屋ユイカ。映画はこの二人に 涼(勝地涼)を加えた三人の高校生を中心に、原作の設定を借りた一種の青春映画と なっている。今春二十歳になった鈴木さんの、十代最後の制服姿を見られる最後の チャンスでもある。

「原作コミックは、今回のオファーをいただいて台本を読んだ後によみました。それ 以前から『BANANA FISH』や『ラヴァーズ・キス』など吉田秋生先生の大ファンだっ たので、カバーに他の作品のタイトルが載っているのを見て存在だけは知っていたん です。だから一番最初に名前を聞いたときは"あの『吉祥天女』ですか?"という感じ でした。まさか自分が吉田先生の作品の中で生きられるとは思っていなかったので、 嬉しかったと同時に不安でもありました」

 叶小夜子役を演じる上ではリアリティを出すことに気をつけたという。「今までに 演じたことのないタイプのキャラクターで、男性を翻弄していくというのも私の中に は全くない要素だったので、役をもらったときは"本当に自分でいいのかな?"という 気持ちが一番大きかったかもしれません。このお話も小夜子という人物自体もあまり 身近ではないので、どうすれば小夜子が本当にいそうな人に見えるかというのは気を つけました」。

 原作の小夜子はかなり人間離れした妖怪的な存在で、それゆえの哀しみを抱える一 種のモンスターとも言えるが、映画ではむしろ普通の女子高生としての小夜子の側面 が強調されている。「監督からは青春映画としての要素を強くしていきたいとうか がっていて、実際に現場に入ってみると小夜子がただの女の子でいられる瞬間が想像 よりも多くあったんです。"普通の女の子が叶小夜子にならざるを得なかったんだ"と いう感じはそのときにやっとわかりました。でも何が一番大変だったかというと、ロ ングヘアに見せるためのエクステをつけるのに6時間かかったこと!」

 怪しい美しさで男性を虜にする小夜子は、涼と暁という対照的な二人の男性に思わ れる役でもある。「私自身は暁のようないばっている感じは苦手なので、どちらかと いうと涼のほうがタイプかな。寂しげな男性に惹かれます。(涼役の)勝地君とはお 互いに小学生の頃から知っていて、何度も共演したことがあるのですごく安心感があ りました。役がなかなかつかめなかった分、お芝居の上で受けとめてくれたり投げて くれる相手がいたことで救われました。小夜子と涼は似ているからこそ、ぶつかった り惹かれ合ったりするんだと思います。その似た者同士感は私と勝地君の間にもあっ て、それは他の人が相手だったら出なかったかもしれません。小夜子はとても孤独な 役だったので、撮影がオフのときに由似子役の本仮屋ユイカちゃんと金沢を観光した り、市川実日子さんとふざけたり、共演者のみんなには本当に助けられました」。

 今年、めでたく二十歳をむかえた鈴木さん。幼いときから子役として大人に憧れて 仕事をしてきたため、自分の中で大人の部分と子供の部分の差が激しくなってしまっ たと言う。「インタビューなどでちゃんと答えようとすると、どうしても実年齢よ り大人な言い回しになってしまうんです。それが生意気だととられてしまうんじゃな いかと思ったり、イメージをこわしてしまう恐怖感もあって、自分の思ったことをそ のまま言葉に出すということが上手くできなかったんです。その意味では、二十歳に なってからは逆にあまり背伸びをしなくてもいいのかなと楽になった感じはありま す」。

「若い三人の男女の青春や、この年齢特有の心の揺れや何かがちゃんと出ればいいな と思って演じていたので、ドロドロした話の中でもユイカちゃんとのエピソードで浄 化されたような気分になってもらったり、最後にちょっと癒されて帰ってもらえたら 嬉しいです。小夜子は光によって変わるプリズムのような存在ですが、私自身は透明 でいたいですね。役によって色を変えていける、カメレオンや粘土のような女優にな りたいです」。

取材:那須千里、原口一也
文:那須千里
『吉祥天女』
原作:吉田秋生
監督:及川中
出演:鈴木杏、本仮屋ユイカ、勝地涼、深水元基、市川実日子ほか
配給:CKエンタテインメント[cubical]
公式HPhttp://www.kisshohtennyo.jp/




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