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更新 2007年11月08日

『1303号室』中越典子インタビュー

 海からの風に揺れるカーテン。染み一つない綺麗な部屋。「1303号室」のプレートが真新しく光る。憧れだった、海の見える高級マンション。緑川沙弥香の胸は高鳴る。明日から恋人の岩田健一郎と共に同棲生活が始まるのだ。引越しを終えた二人は友人を招き、ホームパーティーを開く。友人たちの祝福に囲まれ、沙弥香は人生最高の日を迎えていた。
 パーティーも終盤を迎え、沙弥香は飼い犬のサマンサを追って和室に踏み入った。鼻をくすぐる、何かの腐ったような臭い。押入れの襖に何者かの気配があった。リビングに戻り、頼りない足取りでベランダへと向かう沙弥香。健一郎は不信の目を向ける。明らかに様子がおかしい。沙弥香はソファに置かれたクマのぬいぐるみを抱き、健一郎に微笑みかけると、そのまま躊躇なく地面へと身を投げた。コンクリートの表面に叩きつけられ、ありえない方向に曲がった沙弥香の四肢。笑っているような顔。身体から染み出す赤黒い液体……。人形のように綺麗な少女がクマのぬいぐるみを拾い上げ、囁いた。「また落ちちゃったね……」

 沙弥香の葬儀の日。姉の真利子は健一郎から沙弥香の死が自殺ではないと聞かされる。真利子は沙弥香の死に不信を感じ、部屋の整理も兼ねて1303号室を訪れる。一度も使われることのなかった寝具。姉妹の写真。壁に貼られたままの、引越し予定表。部屋に置き去られた携帯電話には、はしゃぐ沙弥香のメールが残されていた。真利子は髪の絡みついたピアスを拾う。沙弥香の趣味ではない、古びたものだった。
 真利子は隣室(1302号室)の少女を訪ねる。その手にはあのクマのぬいぐるみが抱きしめられていた。散らかされ荒廃した部屋の中で少女は一人、母親の帰りを待っている。「お姉ちゃん。隣のお部屋、怖くないの?」「隣の女の人は、みんな死んじゃうんだよ」 人形のように美しい、無表情な隣室の少女。彼女との出会いが真利子を『1303号室』の惨劇へと誘う……。

 『湘南人肉医』(映画化名は『最後の晩餐』)に次ぐ、大石圭原作の映画化第二弾『1303号室』。大石作品は映像化が難しいと言われ続けていて、中々実現に至らないのが現状の最中、『最後の晩餐』福谷修監督の次にメガホンを獲り、アメリカ資本で作られたJホラーという極めて珍しいケースでの演出に挑んだのが及川中監督であった。そしてヒロインを務めたのが中越典子。現在公開中の本作品について彼女から撮影時のエピソードなど舞台裏を語ってもらった。

演技の幅を広げるのにはホラー映画への出演も必要不可欠!

中越 『1303号室』に出演した理由ですが、怖いのは苦手ですけどジャパニーズホラーには、やは り興味ありましたので、ヒロイン役でオファーがあった時は怖さよりも、嬉しかった部分の方が大 きかったですね。ある意味ホラー映画でヒロインを演じれるってことは単純に女優として通るべき 道だったりもするし、挑戦してみたい気持ちも強かったので前向きに立ち向かう覚悟も決めました 。その辺りが理由でしたけど……でも怖いのは苦手ですけどね(苦笑)。

――ホラー映画って役者道を突っ走るのならモチロン登竜門ですよ! ホラー映画で如何に顔だけ で演技の表現をやり遂げれるか、はたまたヒューマンドラマなどでは絶叫するシーンとかないです から挑戦することは良いことですよ!

中越 でも怖さを引き出す演技って本当に難しいですよね。やったことのないことをやれる部分で も貴重な体験だった気がします。出来上がった作品観て思ったのは、悲しかったり、恐怖に迫って いたりと今までに見たこともない自分がスクリーンの中にいたことに驚きましたね。そんな私の姿 を多くの人に是非! 是非! 観てもらいたいです!

――中越さんは『コワイ女』以来、ホラーのジャンルへ出演するのは2度目ですよね?

中越 はい、そうですね。『コワイ女』はコメディチックな雰囲気でしたので、『1303号室』のよ うな直球ホラーは初めての経験でしたね。私自身、ホラー映画もそうなんですけど本当に怖い事が 苦手なんですよ。夢に見ちゃうタイプで……(苦笑)。ですのでホラー映画を率先して自分から映画 館へ観に行くことすらしたことがなかったんです。

――でも、今回は観る側というよりも出演する側へまわってますが(笑)。

中越 演技の幅を広げるのに今回のような怖いホラー映画も私としては必要だと思っているんです ! 『1303号室』は本当に執念というかなんというか親子の愛情から生まれる憎悪だったり、そう いうもっとも人間らしい愛から生まれる恐怖みたいなところがあるので、ホラー映画とはいえ"人 間"と"人間"の絡む怨念的なリアルさが作品のポイントでもありましたので大変良い経験を及川監 督からはさせて頂きました。劇中の私よりも素顔の私の方がもっと怖がりなので、夜になるとカー テンの隙間から外の光が入ってきたりするだけで、その光が作る影の形とかでさえ怖がったり怯え ちゃうようなタイプなんですよっ!

――へぇ〜意外ですね! じゃあ、この『1303号室』での恐怖的演技っていうのは演技じゃなくリ アルだったというわけですか?

中越 まぁ、そうですね(苦笑)。でも怖い事にはほんとーーーに弱いのも事実ですよ。心霊体験的 な経験もあるにはあるんですが……。

――え!? そのお話は是非聞きたいところですねぇ。

中越 心霊体験といっても写真なんですが……おばあちゃんらしき姿の人が私の肩に手を置いて写 ってたんですよね。

――集合写真とかでですか?

中越 お正月の初日の出の際に姉と2人で撮った時の写真ですね。確か……小学校高学年の時だっ たと思います。現像して上がって来た写真観た時に最初「何だろう、これ?」って思ってたんです けど……。

――うわっ! それは怖い!!! そのおばあちゃんみたいな手というのは、身内で亡くなった方 のではないんですか?

中越 はい、幸い私の亡くなったおばあちゃんだったんです。丁度、年末に亡くなったばっかりで したので私たちのところへ現れてくれたんじゃないかと思ってます。私はおばあちゃん子で入院し ていた病院には頻繁に通ったりとかしてたので、おばあちゃんとしても感謝の意味も込めて元旦の 記念写真に登場してくれたような気もします。おばあちゃんの顔も白い煙で形作られていました。 姉は今思い出すと「そんな写真あったけ?」って言っちゃうんですよ。だから「あったじゃん!」 って私は説明するんですが、それは私の記憶の中だけなのかもって思う時もあるんですが、私とし てはおばあちゃんが現れてくれたと信じてますね。そして私を守ってくれていると思います。

――最初は怖い話かと思ったんですが、良い話じゃないですか。心に染みますよ。

『1303号室』の撮影時のエピソードについて

中越 そうですねぇ……沙弥香と戦うみたいなちょっとしたアクションシーンが僅かな部分であっ たんですけど、そのバトルシーンが面白かったですね。女優のお仕事をさせて頂いてますが、アク ション的なことは今まであまり経験したことがなかったのが新鮮だったんじゃないでしょうか。た だちょっと飛び移るだけのシーンで、顔を「ガンッ!」って打っちゃってケガしちゃったんですけ ども(苦笑)。

――顔をぶつけたら撮影続行できなかったんじゃないですか?

中越 私も慣れてないからケガしちゃったんですけど、顔をスグにアイシングして冷やしながら、 そこまで酷くなかったこともあり大丈夫でしたよ。沙弥香の髪の毛がまとわりついて引っ張られて いくシーンとかも全部自分で引っ張られてるって演技しなきゃいけなかったところがパントマイム 的アクションでそれもまた初体験でした。しかも、及川監督はプラスしてセクシーさを出すように と……(笑)。

――胸のボタンを開けたような感じでと?

中越 そうそうそう! 「ここもちょっと破けちゃった感じで!」みたいな要求してきて面白かっ たですね。演技する上での表現というか見せ方ですか、その辺は少々難しかったんですけどね。

――まぁ、ホラー映画っていうのはやっぱり、ちょっとセクシーなシーンとか必要だったりとかあ りますんで、その辺は王道チックな部分も歩んでたと思いますね。

中越 母と家族の問題や兄弟との問題みたいなところで、私も姉が2人いて、やっぱり母は姉のこ とが好きなんじゃないかとか、そういう意識がスゴイ敏感な子供の時期ってあったわけですし感じ たりもするんですよね。ちょっとしたこととかだけでも、ズシって心の中に突き刺さっちゃって。 私が演じた真利子の沙弥香に対するヤキモチというか嫉妬心というか、お母さんに対する「なんで 私のことをちゃんと考えてくれないの?」「私はこんなにしっかり頑張ってるじゃん」「それでも なんで沙弥香のことがそんなに好きなの?」「すごい悲しい……」とか、そういう家族との葛藤的 な描写を及川監督は重視していたので、普通のホラーというよりも家族愛をベースにした悲しい出 来事が背景にはあったんだと理解した上で演技するようにとも求められましたね。 

――ストーリーラインはしっかりしていましたからね。原作の大石圭さんが得意とする人間模様が 映像でも描かれてました。

中越 そうですよね、本当に細かいところまで人物描写が描かれてましたね。やはりホラーでも原 作が良いから人間模様が希薄にならず、ってわけですし、このような作品は血がドバッと出てとか いう映画でもないので心理描写も必要なんだと実感させられました。

――それと観終わった後、なんだか切ない気持ちになってしまいました。怨念めいた部分での演技 的表現は難しいんじゃないかなぁーって思いましたが、やはり苦労しました?

中越 その表現部分は難しかったですね。私自身があまりホラーに慣れてないがためにどう受け止 めていいのかわからない部分もありました。ホラーはただ怖い怖いキャーキャーみたいな作品もあ りますけど、『1303号室』はそれにプラスして悲しくなるような、なんだろう……この胸が締め付 けられるような苦しさとかも感じてもらえればいいかなと思います。1303号室には呪われた何かが あって、そこに入ると飛び降り自殺しちゃうだけみたいな簡単なイメージができちゃうと思います が、実はそこの裏には何か怖く深いテーマがあるんだっていうことを感じてもらえれば、一番良い 鑑賞方法じゃないかと……。

―ーそうです、まさにそこですよ。深い怨念的なテーマを感じてもらえれば、ただの恐怖だけしか ないホラー映画にならないはずですからね。

取材・文 ジャンクハンター吉田
『1303号室』
2007/アメリカ/94分/ビスタサイズ
監督:及川中
出演:中越典子、古田新太、大谷直子、板谷由夏、深田あき、初音映莉子、松尾敏伸、街田しおん
配給:スリー・ジー・コミュニケーションズ
公式サイトhttp://www.1303.jp/
銀座シネパトス、シネマート新宿ほかにて全国順次公開中
© 2007 THE MONTECRISTO FUND LLC.




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