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EnterJam > レビュー > NYムービーレビューカフェ
更新 2008年07月24日

ダークナイト(原題:THE DARK KNIGHT)

8月9日(土)より丸の内プラゼール他 全国ロードショー!

●米国公開日:2008年7月18日
●製作年:2008年
●製作国:アメリカ
●上映時間:152分
●監督:クリストファー・ノーラン
●キャラクター創造:ボブ・ケイン
●原案:クリストファー・ノーラン
 デヴィッド・S・ゴイヤー
●出演: クリスチャン・ベイル
 マイケル・ケイン
ヒース・レジャー
マギー・ギレンホール
ゲイリー・オールドマン
モーガン・フリーマンほか
●配給:ワーナー・ブラザース
日本公式サイト
オリジナル公式サイト
 ™ & © DC Comics © 2008 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved



岡本太陽


映画『バットマン』シリーズ史上、ここまで美しく残酷な物語があっただろうか。クリストファー・ノーランが再びメガホンを取った2005年の『バットマン・ビギンズ』の続編『ダークナイト』はわたしたちの想像を遥かに上回る、完全にヒーロー映画の領域を越えたこの夏最高の作品だ。

ノーラン監督の前作『バットマン・ビギンズ』ではジョーカーの登場を伺わせたところで終わった。今作はそのジョーカーによってゴッサム・シティが恐怖のどん底に突き落とされる。ブルース・ウェインことバットマンは凶悪な犯罪者ジョーカーを追うが、彼はバットマンや警察をからかうジョーカーに苦戦を強いられる。そんな中、もう1人の敵が現れ、物語は複雑化する。

そのもう1人の敵とは『バットマン・フォーエバー』でトミー・リー・ジョーンズが演じたトゥーフェイス。コミックを読んだことがある人は分かると思うが、ゴッサム・シティに新しくやって来た地方検事ハーヴィ・デントが、そのトゥーフェイスに変わる。デントに扮するのは『サンキュ・スモーキング』のアーロン・エッカート。この役は物語の中の断層の1つとして機能している。

そしてやはり『ダークナイト』の中で一番注目されるのはヒース・レジャー演じるジョーカーだろう。レジャーが研究を重ねたというこの役は1989年のコミカルなジャック・ニコルソン版ジョーカーとは全く異質のキャラクター。落ち着いているが残忍で気味が悪いその役を作り上げるために、レジャーは読み切りグラフィックノーベルの「バットマン:キリング・ジョーク」と「バットマン:アーカム・アサイラム」を参考にし、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスやスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』も演技に取り入れているという。このジョーカーはもうヒース・レジャーではなく、何かに取り憑かれてしまっているかの様に見え、破壊神の如き様相を呈しているのが印象的だ。

この新しいジョーカーには過去がない。また彼の言動を見ていると、ジョーカーは実は死にたいのではないかと思わされる。そんな男に人々はなす術がなく、ただ恐れをなすしかない。ジョーカーは冷静でかつ凶暴。この役は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の主人公ダニエル・プレーンビューに匹敵するインパクトだ。しかし、面白いのは、そんな不敵なジョーカーであるにも関わらず、わたしたちは彼に憧れすら抱いてしまう点だ。彼の魅力には抵抗する余地がない。映画が終わる頃にはもっとヒース・レジャーのジョーカーを見たいという自分に気付くはずだ。

『バットマン・ビギンズ』やそれ以前に制作された『バットマン』シリーズと『ダークナイト』の決定的な相違点は、『ダークナイト』以前のものがファンタジックな物語であるのに対し、『バットマン』の新作はマイケル・マン監督の『ヒート』の様な犯罪ドラマの雰囲気を漂わせている事だ。ゆえに物語はかなりの緊迫感に包まれている。『ダークナイト』は『バットマン・ビギンズ』の続編でありながらも、これまでに作られた『バットマン』シリーズとは全く異なる単独の物語としても楽しむことが出来るだろう。

今回もクリスチャン・ベールがブルース・ウェインを演じているが、本作では彼は自分がバットマンでいる必要があるのか、レイチェルと普通の暮らしを手にした方が良いのではないかと苦悩する。そんな中、彼自身の心にも「悪」が見え隠れする。この物語の中で純粋な「善」はゲイリー・オールドマン扮するゴードン警部補だけなのが非常に興味深い。 この映画は2時間半。しかしバットマン自身の苦悩、個性豊かな悪役達が今まで観た事のない究極の物語を作り上げる。クリストファー・ノーランと彼の弟ジョナサン・ノーランの書き上げた脚本は完璧に近く、映画の上映時間はあっという間に過ぎてしまう。その中で、やはり一番輝いているのはヒース・レジャーのジョーカー。このキャラクターは映画史の傑作だ。本作がレジャーにとっての遺作となってしまったが、彼がこの役を演じたのは奇跡的ですらある。この残酷で美しく、激しくも切ない映画史に残る名作にただただ溜息が出る。

レビュアー紹介


岡本太陽

ニューヨーク在住のフリーライターとして奔走中。映画はジャンル問わず直感で選ぶ主義(ニューヨークも勘で来た)。映画に情熱を捧げる傍ら、お茶にもかなりのこだわりが。家にお茶専用カウンターを設置するのが今後の目標。







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